パンのペリカンのはなし/渡辺陸

ペリカンは東京の浅草にあるパン屋さんで、食パンとロールパンのみを売っている。この本の著者はペリカンの4代目の店主だそうな。

 今は通販をやっていないそうなので、気軽に行ける距離に住んでいない私はここのパンを多分一生口にすることはないのだろうけど、何故か私はここのパンがおいしいと言われていることを知っていて、以前から食べてみたいなあと思っていた。

最近流行りの食パン専門店の、「甘い」とか「ふわふわ」とか言われるパンではなくて食事向けのパンらしい。しかもモチモチしているなんて言われるとすごく食べたい。

 

今は食パン専門店がいくつかあるけど、ペリカンが食パンとロールパンのみに絞り始めた頃は、そういう売り方をするパン屋さんは他になかった。2代目の店主が、他のパン屋さんと競争したくないという理由で商品を絞り、小売りではなく卸し中心に転換したのがこのスタイルの始まりなのだそうな。

言い方を変えると、うまいことブルーオーシャンを見つけたということか。

と言っても、こういう仕事は色々と大変なんだろうけど。朝番の人は代わりがきかなくて(突然体調不良などで休みたいと思っても、朝早いので代わりを頼めない)プレッシャーらしい。毎日やらないといけなくて、後から取り戻すことができない仕事って大変だ。

パンのペリカンのはなし

パンのペリカンのはなし

 

 

シルクロード・路上の900日/大村一郎

 著者である大村さんの旅行記西安からローマまでを、何と徒歩で。

言葉が通じないことや、まともに泊まる場所がないことが多い。暑さ寒さが過酷な土地もある。そんな中を何日もかけて徒歩で旅行しようだなんて、よく考え付いたものだと思う。

大変な思いはしつつ、所々でその土地の人達が助けてくれる。何日もお風呂に入っていない、言葉もろくに通じない通りがかりの人に食事をふるまい、家に泊めるだなんて自分だったらとてもできないけど、中国の田舎の方なんかは、きっと今でも同じような感じで人々が暮らしているんだろうなあ。

そこら辺で売っている食べ物がすごくおいしそうに書かれていて少し羨ましいけど、お腹を壊さないか心配になってしまう。

本には書かれていないので詳しいことは分からないけど、きっと相当の準備はしていったのだろうなあ。どれだけ準備をすれば行き倒れなくて済むのか私にはあまり想像がつかないけど、行く先々の気候はもちろんのこと、そこで暮らしている人達の文化なんかの知識もある程度ないと難しい気がする。

シルクロード・路上の900日―西安・ローマ1万2000キロを歩く

シルクロード・路上の900日―西安・ローマ1万2000キロを歩く

 

 

皿の中に、イタリア/内田洋子

著者の内田さんはイタリアで長く暮らしているらしい。どんな仕事をしている方なのかよく分からないけど、何かを書くためにカラブリアという場所について知る必要があり、カラブリア出身の3兄弟がやっている魚屋に通い始めるところからこの本は始まる。

魚屋と仲良くなるために毎週大量に魚を買ってきては、1人では食べきれないので人を呼んでふるまう。知らない人までやってきたりして、半分楽しそうではあるけど、私にはちょっと想像がつかない人付き合いの仕方だな。

 

タイトルの通り、頻繁にイタリアの食べ物が登場する。どれもおいしそう。

意外と生食が多くて驚いた。空豆を生で食べるのが気になる。日本では空豆を生で食べるなんて聞いたことがないけれど、種類が違うのか、相当新鮮でなければ駄目なのか。

それから、生のイカにレモンを絞って、パセリと和えて食べると書いてあったかな。食べたい。

 

皿の中に、イタリア

皿の中に、イタリア

 

 

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」/渡辺格

著者の渡辺さんはいわゆる田舎で天然酵母のパンを作っている。渡辺さんがパン作りを始めてから、なぜ「田舎で」「天然酵母の」パンを作るに至ったのかを、マルクス資本論に絡めながら説明したのが本書。

パンは好きだけど天然酵母イーストはどう違うのか知らなかったし、ついでに資本論にも興味があったので、面白かった。

 

パンを作る時によく使われるイーストとは、自然界のあらゆるところに生息している酵母の中から、パンを作るのに向いている酵母だけを抽出して人工的に増やしたものらしい。

一方天然酵母は色々な菌が混ざっているので、ちょっとした温度の変化などでパンが膨らまなくなってしまったりと、管理が難しい。世の中に出回っている多くのパンは、効率よくパンを作るためにイーストを使っている。天然酵母の良い所は、色々な菌が働くことで味わい深いパンができることなのだそうな。

 

渡辺さんがなぜ天然酵母でパンを作ろうと思ったのかというと、一つは、イーストの作り方について、安全に不安があったから。もう一つは、イーストを使えば誰でも簡単にパンを作ることができるけれど、誰でもできる仕事は替えがきくので、労働者は職を失わないために、労働環境が悪くても耐えるしかなくなる。そうではなくて、きちんとしたパンを作る技術を身に着け、労働力を買い叩かれることがない働き方を目指したから。

私も一応手に職がある系の仕事をしているけど労働者側だし、周りで切り捨てられる人を沢山見ている。選ばれる人でなくなったら困るし、できればある程度仕事を選べる立場でいたいと思う。

 

渡辺さんは資本主義のシステムから抜け出したくて、会社を辞めパン屋を始めた。私も、この世の中のシステムからちょっと外れて生きられたらいいなあとは思っているけれど、そう簡単にはいかないだろうなあ。

利潤を出そうとするから搾取が生まれる。利潤を出さなくても、生きていくのに必要なリターンだけ得てうまく日々を回していければいいのだけど。ということをひとまず頭の片隅に置いておこう。

 

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

 

 

腐海の花/柳原慧

真夜は二十近くも年下の誠人と付き合っている。誠人はよく懐いた犬のように真夜を慕っているけれど、その一方で同年代の女と浮気をしているようだ。真夜は浮気の証拠を掴もうとして、誠人が捨てたメモに書かれていた電話番号に無言電話をかけたり、駅で待ち伏せをしたりする。

 

最初から最後まで、真夜の視点で書かれている。それは良いのだけど、どこまでが事実なのか、何を信じれば良いのか分からない。(小説なので全て嘘と言えばそうなのだけど。)実は殆ど真夜の妄想なんじゃないかという気もする。それも真夜にとっては事実なのだろうけど。

 

腐海の花

腐海の花

 

 

仕事漂流/稲泉連

本書は、就職氷河期に就職し、その後数年で転職した8人の男女について書かれている。ちなみに、良い大学に行って良い所に就職した人が多い。

 

最近、今の仕事を不満に感じるような、いやどちらかと言うと、このままでは良くないんじゃないかという不安があって焦っているような・・・理由がよく分からないイラつきを感じる。その解決のきっかけにならないかと思って読んでみた。

 

私も新卒で入った会社を辞めた人で、彼らが転職した理由には共感したりしなかったり。

辞めた理由というのは色々あって、数年かけて積み重なってきたものと、辞める直前に爆発のきっかけになったものは少し違う。結局のところ、組織に入る前から楽しく働けるかどうか分からないし、状況によって周りも自分も変わるので、ずっと同じでいるのは難しいのかもしれない。時々見直しが入るのは仕方がないことなのかもね。

 

仕事漂流 ― 就職氷河期世代の「働き方」

仕事漂流 ― 就職氷河期世代の「働き方」

 

 

国語ゼミ/佐藤優

本の内容とは直接関係ないのだけど、経済原論の一説について説明されていたこと。

私達のような労働者は労働力を商品として売り、その対価として賃金を受け取っている。だから、

  • 資本家にとって労働力はものを生産するための材料や機械と同で、使い倒すものである。
  • 賃金は良い物を作って売り上げが上がったなどの成果に対する報酬ではなく、労働力という商品に対して支払われるものなので、会社の利益は労働者の賃金に直接結びつかない。

これ、よく覚えておこう。

勿論きっちりこのルールで世の中が動いているわけではないと思うけど。

 

それから、佐藤さんの他の本でも登場した山椒魚戦争、やっぱり面白そうなのでいずれ読みたい。