「イスラム国」の内部へ/ユルゲン・トーデンヘーファー

ドイツのフリージャーナリストである著者が、ISに入国?するまでと、IS内で取材を行って帰国するまでの10日間の様子を書いている。

 

アメリカや西側諸国が完全に善で、ISが絶対悪とは思わない。戦争を行う者には双方に正義があると思って読んだけれど、少なくともこの本でインタビューに答えたISの人達の、テロや戦争を行う理由には、同情の余地がないと感じた。自分たちと考え方が異なる人達は征服するだの殺すだの言われてもなあ。元々のイスラム教の教義はそういうものではないらしいのに、どうしてそうなってしまったのだろう。私はあなた達と同じようには考えられないけど、あなた達が信じたいものがあるならそれでいいじゃないか、でも他人に迷惑をかけるのはやめてくれ。

 

IS、最近ほぼ消滅したような話を聞いたような気がするけど、この先どうなるのだろう。でも今ISが消滅したとしても、一時的に国だか組織だかを維持できないように壊滅させられただけで、考え方が消えてなくなったわけではないと思うので、また同じような団体ができるんだろうなあ。

 

「イスラム国」の内部へ:悪夢の10日間

「イスラム国」の内部へ:悪夢の10日間

 

 

資本主義はなぜ自壊したのか/中谷巌

アメリカに端を発する新自由主義グローバル資本主義の考え方は、稼いだ者が勝者という考え方である。この考え方を推し進めると、貧富の差や環境破壊に繋がる。日本は島国であるという特性上、人との信頼関係に重きを置き、平等な社会を築いてきたのだけど、新自由主義グローバル資本主義の考え方が入ってきたことによって、今や他国に比べて格差の大きな国になってしまった。というお話。

 

年功序列って日本のおかしな所だよね、とか、やったもん勝ちで何が悪いというような考え方は、何となく私の中にもある。私も新自由主義の考え方に染まっているということか。まあ、日本全体がそれを良しとして改革を進めてきたので、経済の話に疎い私なんかがそういうもんだと思ってしまうのも無理はないのでしょう。

 

この本の初版が2008年発行で、それからもう10年近く経つのに、今もこの本に書かれている状況と特に変わっていないように思う。私が知らないだけかもしれないけど、もしその通りなら、軌道修正されないまま破滅に向かって突き進んでいるということだ。

この本にベーシックインカムのことが少し書かれているけど、ベーシックインカムなんて言葉は、今でも知らない人の方が多いのではないかな。日本はこの先どうなるのだろう。

 

日本の古い書物に書かれていることに、日本人の考え方が表れているという話、他の方の本でも見たな。気になる。

 

資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言

資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言

 

 

死刑/森達也

本書は、森達也さんが、確定死刑囚、弁護士、刑務官(死刑執行も職務に含まれる)、被害者の遺族、死刑制度廃止派の人、死刑制度存置派の人等に会い、日本の死刑制度の是非について述べた本である。

 

私は何年か前に読んだ13階段という本で刑務官の苦悩を知り、死刑に興味を持ち、この本のことを知って気になっていたのだけど、読まないまま今に至っていた。この本の感想を一言で言うととても面白かった。もちろん面白おかしいという意味ではない。森さんが色々な人の話を聞き、悩み考えたことが興味深かった。

 

この本を読んで知ったこ

世界的にみると、死刑制度がある国の方が少ない。

日本では・・・この本が書かれたのは2008年頃だけれど、少なくともその頃は国民の8割が死刑存置派だそうだ。調べていないけれど、多分今もそれほど変わっていないのではないかと思う。

この本でも言及されていたけれど、日本では死刑に関する情報が隠されていてあまり考える機会がないことが、死刑制度が変わらない原因の一つになっているようだ。

 

廃止か存置か

私はこの本を読んで廃止か存置かを決めたいわけではないのだけど。

森さんはこの本の取材を始める前に廃止派で、意見が変わっても構わないと思っていたけど結果的に廃止派だそうだ。森さんが、殺人を犯してしまった人でも、知り合ってしまったら救いたい、救いたいと書いているのを見て少し驚いた。この方がどういう方なのかよく知らないので意外と言ったら変なのだけど。この本の副題、まさか森さんのこの強い思いのことだったとは。

私は、死刑が全面的に良いとは言えないけれど、既に存在している死刑制度を廃止するほど強い理由は持ち合わせていない。つまり存置論者だ。でももし日本に死刑制度がなかったら、ほぼ間違いなく、死刑制度を作ろうとも言わない。死刑の是非について、どちらの意見もそれぞれそうだよねと思う。当事者だけでなくその周りの色々な人も含めた苦悩を考えると、どちらかに決められない。

 

死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う

死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う

 

 

甦るロシア帝国/佐藤優

佐藤さんは、崩壊前のソ連に外交官として勤務していた頃に、モスクワ大学で神学について講義をしていた。本書は、その時の教え子の学生や、周辺の知識人たちとのやり取りを通して、ソ連崩壊の理由について考えたことを述べた本であるとのこと。

自壊する帝国を読んだときに、ソ連は何で崩壊したんだ?いつの間に崩壊したんだ?と思った記憶があるが、多分あちらにはそういうことはあまり書いてなかったんだな。

 

私のとってこの本の内容は、興味深いと思う一方で、馴染みのない考え方が度々登場するのでいまいちしっくりこない部分も多々あり、というところだった。まあこの方の本を読むときにはよくある。

けれどよく分からないことも、こうして何度か触れているうちに、何となく分かるようになってきた気はする。

 

 根本的な原因はさておき、ソ連が崩壊した直接的な原因は、ソ連に含まれていた国が次々と独立したことだとのようだ。国・・・民族の問題と言ってもいいのかな。

民族とは何かと改めて定義しようとすると、何と言ったらいいのだろう。佐藤さんは何と言っていたっけ。日本に住んでいると多分大半の人はそうだと思うけど、あまり意識することがない問題だ。だけど一つの国の中に複数の民族が住んでいることもあり、そういう国に住んでいる人たちはきっと、「自分は○○人だ」という意識を強く持っているのだね。

 

それから一つ印象に残ったのは、とても優秀で容姿も整っているけれど、少し特殊な地域に生まれた女性が、親兄弟を養うために外国人の愛人になってしまったという、ちとショックな話。不憫でならない。

 

甦るロシア帝国 (文春文庫)

甦るロシア帝国 (文春文庫)

 

 

紳士協定/佐藤優

佐藤さんが外務省の語学研修のためイギリスに留学した際に出会った、ホームステイ先家族の末っ子グレンが主な登場人物。

若手の外務省職員と12歳の男の子は、お互いの勉強を助け合うという紳士協定を結んだ。

 

イギリスは階級の移動が日本よりずっと小さいらしい。確かに私は階級なんて意識したことがない。私が偶々そういうことを意識する環境で生きていないだけなのかもしれないけれど、多分多くの日本人は私と同じなのではないかな。

私の親は大学を出ていないけど、私は大学を出た。仮に私が実際に行った大学よりももっと良い大学に行けたとしても、階級について考え、躊躇することはないと思うけれど、グレンは大学に行くかどうかを悩んでいた。大学に行くと、親とは違う世界で生きることになるかららしい。そんなに生き方が変わるものなのか。そのことがそんなに問題なのか。その辺りが日本とは考え方が違うということなのか。

結局グレンは大学に行かないことを選択する。人それぞれに理由があってのことなので何とも言えないけれど、せっかく意欲や才能があるのに、私からすると謎の理由でやりたいことを諦めなければならないなんて、残念な気がする。

 

殆どグレンとのやりとりがメインだけれど、もう一人の主な登場人物は同期の武藤さん。この方は佐藤さんの他の本でも時々登場する。佐藤さんの本をいくつか読んでいると、同じ人物がちょこちょこ出てきて、まるでCLAMPワールドのようだ(笑)。

それはそうとあとがきで、佐藤さんが逮捕された時、外務省が、佐藤さんを告発するための調査責任者を武藤さんにやらせた、という話が出てきた。この話自体は他の本でも見たことがあったけれど、この本で二人が仲互いしたわけではないのに徐々に距離が離れていく様子を見ていたので、何だか切なくなった。

  

紳士協定―私のイギリス物語

紳士協定―私のイギリス物語

 

 

大世界史/池上彰・佐藤優

池上さんと佐藤さんが、最近の世界情勢について対談した内容をまとめた本。

世界史とタイトルに入っている理由は、現在の世界情勢を読み解くには過去の歴史を知る必要があるから。私もそう思い、少し世界史を勉強したいと考えている。

 

この本が発行されたのは2015年で、割と記憶に新しい出来事の背景が分かって面白い。私が特に印象に残ったのは難民の話。

少し前にどこかに大量の難民がなだれ込んだというニュースを見た。難民になる人達も入ってこられる国の人達もどちらも気の毒だし、正直日本ではとても受け入れられる気がしない。

けれど池上さんが、昔から民族大移動があって、今難民となった人々が他国に大量に移動しているのはそれと同じ。そうやって世界が動いてきたんだということを言っていて、なるほどと思った。

日本は海に囲まれていて簡単に人が入ってこられないけれど、陸続きの国々はそういうことが昔からあり、受け入れる側もまあそこまで敷居が高くないということか。他人事だから言えるのかもしれないけど、メリットもあると聞くし、それほど悲観することではないのかもしれない。

 

 

美瑛 光の旅/中西敏貴

北海道に美瑛という所があり、その辺りの景色などを撮った写真集。

ふるさと納税のおかげで、このような高尚なものが手元にやってきた。

実は北海道、これまで特に興味を持ってはいなかったのだけど、最近北海道出身者の知り合いができ、少し興味を持つようになったことがこの写真集を手にするきっかけになった。

 

美瑛という地名は、アイヌ語のピイェが元になっているのだと書いてある。そういえば北海道には、アイヌ語が元になっている地名が沢山あると聞いたことがある。

それから美瑛の地には明治に初の入植者が入り、その後人の手で少しずつ開拓していったのだそうな。マイナス20度以下に冷え込むこともあり、そのおかげでこの写真集に載っているような美しい現象が見られるのだろうけど、そんなに寒くて、最初は何もなかったであろ土地にどうして人が移り住んだのか。北海道というところは、同じ頃に移り住んだ人が多いのかな。今度調べてみよう。

 

北海道には、見渡す限り人工の建物が何もない場所がどれだけあるんだろう。とにかくでかい。同じ日本とは思えないような気がしてくる。

写真一つ一つに言葉が添えられているのだけど、そのうちの一つに、「こんなシーンに出合えたら、明日はきっといいことがある」と書かれている。この写真集に載っているような景色を見られたら、ものすごくいい気分になれそうだ。

 

美瑛 光の旅

美瑛 光の旅