インテリジェンス人間論/佐藤優

政治家というのは、自分の国が好きで、国のために働こうという人たちのことなんだな。

言うまでもないことだろうけど。

私は、ニュースで見聞きした事件について多少考えはしても、国のことなんて殆ど考えたことがないと思う。

だから政治家がどういうものとか、政治家になりたい人の気持ちがどんなものとか、ピンとこないんだろう。

同じ日本に生まれて育ったのに、愛国心の有無というのはどこで差ができたんだろう。

 

この本のあとがきに、人間は大切な自らの命を、国家や理念や神などのために投げ出す覚悟を持つことができて、その覚悟を作り出すのが思想だと書いてある。

そういう覚悟を持った者は他人の命を奪うことにも躊躇がなく、その例としてイスラム原理主義などが挙げられている。

そして日本人には、宗教紛争や民族対立で命を奪ったり奪われたりするということは理解しづらいと。

そう、テロリストが自爆する気持ちなんて、正直理解し難い。

他人を巻き添えにして自分も死ぬなんて、一体何がしたいのか、どういう心持ちなのかと思う。

仕事に行くのが辛くて自殺する人がいると聞いて「何それ」と思う人もいれば、自爆テロのニュースを見て「ああ、わかる」と思う人も沢山いるんだろうな。

 

インテリジェンス人間論 (新潮文庫)

インテリジェンス人間論 (新潮文庫)

 

 

 

小児救急/鈴木敦秋

あまりの多忙さのため、職務を果たせないことに絶望して自ら命を絶った小児科の医師、夜間救急で十分な処置を受けられずに亡くなった子、不適切な診断で亡くなった子など、小児科医療の悲劇にまつわる医師・患者の遺族達を主人公とした話。

 

小児科の医師不足については以前から聞いたことがある。

この本に書かれている例を見ると、自分が今まで生きてこられたのは運が良かっただけなのかもしれないという気がする。

 

自分は大人だし小さな子供はいないので、どちらかといえば医師の方の話に共感するのだけど、忙しすぎてやるべきことがきちんとできなくなるのはつらいよなあと思う。

私の仕事は人の命に係わることではないし、忙しいと言ってもこれほどではないけれど、それでもストレスを感じるのだから、医師のストレスなんてどれほどのものかと思う。

 

大事な人を亡くした人たちは、同じようなことが二度と起こらないようにと願うけれど、人の体は機械的に診断できるものではなく、実際はミスを完全になくすことはできないだろうから、難しい。

けれどせめて、体制の問題による事故は無くなるといい。

 

小児救急 (講談社文庫)

小児救急 (講談社文庫)

 

 

世界一周デート 怒涛のアジア・アフリカ編/吉田友和・松岡絵里

付き合って1か月で結婚を決めた著者らは、予算400万円で世界一周の新婚旅行へ。

そのうちのアジア・アフリカを巡っていた時の旅行の様子に、10年後のコメントを追記した本。

 

付き合って1か月で結婚を決めた相手と長期間の貧乏旅行だなんて、正直引く。

しかも旅行開始早々にご飯を何食べるかで喧嘩し、宿泊先を出て行ってしまうとかありえない。

けどまだ夫婦(あれっ、苗字違うけどそうだよね?)なのだから、人生何とでもなるということなんだろう。

 

私があまり旅行好きではないからなのだろうけど、楽しそうに書かれているこの本を読んでも、自分も行きたいとはあまり思わない。

珍しいものは食べてみたいので、どこでもドアで行ってサッと帰れるならいいなあ。あと、1人旅はちょっとしてみたい。などと寂しいことを考える。

1週間程度の海外旅行なら何度か行ったことはあるけど(この本に書かれているような過酷な旅行ではない)、自発的にまた行きたいとは思わないなあ。

そういえば学生の頃、友人といるとよく旅行に行きたいねという話になって、正直困ったなと思っていた。

そういうことに乗り気でないというのは、あまり理解してもらえないというか、こちらも言いづらくて。

一緒にいるのに、私だけ仲間外れにするわけにもいかないしね。(変な人でごめんとは思っていた。)

 

世界一周デート アジア・アフリカ編 (幻冬舎文庫)

世界一周デート アジア・アフリカ編 (幻冬舎文庫)

 

 

獄中記/佐藤優

いわゆる鈴木宗男事件絡みで拘置所に拘留された佐藤優さんが、拘置所の中から弁護士や友人に書いた手紙や、拘置所の中でつけていた日記などからの抜粋を本にしたもの。

この方の本は他に「国家の罠」を割と最近読んだのだけど、それと少し内容が被っていたので、もう少し時間を置いてから読めばよかったかなあ。

 

信念について

国家権力にターゲットにされた場合、逃げ切れないことは分かっているので、それならば裁判をどういう方向に持っていくか。

この方は、早く裁判を終わらせて楽になるより、正しさを通すことを選んだ。

自分が納得できる方を選びたいという気持ちは分かる。

人生の10年以上をかけて、色々な困難を乗り越えながらも正しいと信じてやってきたことに対して、悪いと思っていないのにやりましたごめんなさいなんて言いたくないよなあ。

でも何日も拘留されて、検察官に毎日怒鳴られたりしたら、私も折れてしまうのかな。

 

神学について

この方は神学部出身で、拘留中も関連する本を読んだりなどして勉強しているのだけど、私は宗教をあまり意識せずに生きてきたので、どういう学問なのかピンとこない。

そういう知識を持って世の中を見ると、何か違って見えるのかもしれない。

 

姿と声と

この本は日記の内容などが淡々と書かれている(ように見える)ので、この人は常に淡々として物静かな人なのかなという気がしていたけど、この本を読み終わった後、佐藤さんが出ているテレビやラジオの録音をいくつか見たり聞いたりしてみると、本から受ける印象と違っていて、ちょっと面白かった。

 

獄中記

獄中記

 

 

FBI心理分析官/ロバート・K・レスラー&トム・シャットマン

プロファイリングとは、過去の事件や実際に関わった事件の分析から得られた、経験の積み重ねによるものであるとのこと。
この本には、FBIの心理分析官となったロバート・K・レスラー氏が実際に関わった事件の様子や、異常殺人者たちとの面接により聞き出した犯行の手口、犯行前後の心理状態、彼ら生い立ちなどが書かれている。

 

異常殺人者達は、不幸な家庭で育っているということ

それでも、思春期頃に家庭の外で手を差し伸べてくれる人が現れれば救われるのだけど、それもなく、他人を思いやることを教えられないまままま大人になると、暴力的な妄想を現実にすることに歯止めをかけるものがないため、残酷な殺人を犯してしまうとのこと。

捕まって死刑になることが分かっていても止められるものではない。
病院に入っても刑務所に入っても、更生することはないというのが一部の専門家たちの見解らしい。
人はいくつになっても変われるという考え方もあるけれど、「どんな風にでも」というわけにはいかないのかもしれない。
後から正すのが無理なら、そのような不幸が起らないよう防ぐしかないのだろうけど・・・。

 

異常殺人を犯すのは、ほぼ20~30代の白人の男性であるらしい

20~30代というのは、思春期から積み重ねてきた妄想が爆発しだす頃だとか、知力、体力的に十分な年代だとかで、納得できる感じがする。
男性という点も、一般的に女性より男性の方が、力があり闘争心が強いものだと思うので、まあわかる。
けれど白人にほぼ限られるという話を聞いたのはこの本が初めてだ。
遺伝的な理由もあるということなのかなあ。

 

異常と言うけれど

例えば殺してから**したとか、この本にも書いてあるように、全く理解できないことではないんだよなあ。
異常殺人を犯した人達だって、人なのだから。
私達だって、似たような想像くらいはする。
違いは、それをどのくらい頻繁に、どのくらい現実的なこととして想像するか、実現したいと思うか、ということくらいではないかな。
実際にやるかやらないかの差は大きいのだろうけど、その差を決めるのは、歯止めをかけるものの有無だけかもしれない。

 

酷い犯罪を犯した人は死刑にすべきか、という話

異常殺人者達の分析が新たな殺人を防ぐのにとても有益だということと、だから彼らを殺さずに檻に閉じ込めておいた方が良いということは、理屈としては分かる。
その通りだろうなあとは思う。
でも自分の身近な人が被害にあったらそんなことは言っていられないだろうとも思う。
人間には感情があるのだから仕方がない。

 死刑なんて不毛だと思っても、いざという時には目には目を、の方がしっくりきてしまうもの。

 

FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記

FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記

 

 

 

よその子/トリイ・ヘイデン

トリイ・ヘイデンさんと、4人の色々な問題を抱えた子供たちのお話。

この頃のトリイさんは教師?

子供たちの問題は様々で、幼い頃に過酷な経験をした子、脳に障害がある子、原因が全く分からないけれど奇行を繰り返す子など。

 

トリイさんはいつもどうしたらいいか分からないと言っている。

こんなに大変な子供たちを預かっておいて、そんなに無策なのかと思うけど、実際作戦なんて立てようがないんだろうとも思う。

効果があるだろうと思えることをやってみて、それに対する結果が出ることは多くはない。

やったこととは関係なく、何だかわからないけど良くなったということの方が多いかもしれない。

そんな暖簾に腕押し、糠に釘みたいな毎日では心がくじけそうだけど、この方はそういう子供たちに魅せられて、この仕事を生きがいのように感じている。

 

日本語の副題に「見放された子どもたちの物語」と書かれているけど、この本の内容に合っていないと思う。

確かに見放された子もいるけれど、問題のおかげでさぞかし生活は大変だろうと思うのに(問題の内容によっては、どうやって一緒に暮らすのか私には想像がつかないような子もいる)、子を愛している親もいる。生みの親でなくても。

 

この本の冒頭に書かれていた、「生涯、窓のない壁に囲まれた世界の中に見失ってしまった」とは誰のことを指しているのだろう。

冒頭で呼ばれている名前と本文に登場する子供たちの名前は異なっているし、この本の終わりでは全員が一応いい感じでやっている様子までしか書かれていないので、全く分からない。

 

よその子―見放された子どもたちの物語

よその子―見放された子どもたちの物語

 

 

兵士を見よ/杉山隆男

航空自衛隊で働く人達の話。

主にF15という戦闘機に乗る人達と、事故や遭難が起った時にその救出にあたるメディックという仕事をする人達について書かれている。

 

戦闘機乗り

訓練中に事故で亡くなる方が、それなりの数いるとのこと。

けれど戦闘機に乗る人達は嫌々乗っているのではなく、乗る理由のほぼ全ては、戦闘機が好きだから、ということらしい。

大変だろうと想像はするけど、何となくかっこいいからこの職業を目指したと。そんなもんだよね。

 

戦闘機に乗るのは体にものすごく負荷がかかるので、頑丈なヘルメットとスーツに、酸素マスクまでつけなければならない。

パイロットは、他の職業に就いている人よりも顔にしわが多くできてしまうし、腰の調子を悪くする人も多いらしい。

9Gとはどのくらいか想像がつかないけれど、きっとジェットコースターのもっとすごいやつに乗った感じなんだろう。

多分乗せてもらったら、もう、早く終わってと思うんだろう。

一機何百万もするし、入念なメンテナンスが必要だし、乗りこなすのも大変だし。それでも、戦闘機を持たなければならないのか。ならなということなんでしょうね。

 

メディック

こちらは日本でも活躍する場があるので、戦闘機乗りよりはどんなものか想像がしやすい。

一仕事終える度にものすごく達成感はありそうだけど、その一仕事が毎度毎度大変すぎる。

それにしても、引き受けてくれる人がいるから私達は安心していられるけど、こんな職業の人の家族は、常に安心できないだろうなあ。

 

兵士を見よ

兵士を見よ