脳を鍛える/立花隆

著者の立花隆さんが東大で講義した内容を本にまとめたものらしい。

大雑把に、前半はいわゆる文系の話、後半は理系の話だったように思う。

この本に文系と理系それぞれの知識が偏りすぎているのは良くないよねと書かれているのだけど、確かに、私が文系だからなのか、後半の話は難しかった。前半の話は大体わかる話だと思ったけど、理系の人は前半の話をよく分からないと思うのだろうか?

大学の教養科目でとった何かの講義で聞いたエントロピー増大の法則は覚えていたのだけど、これが熱力学の第二法則なんていう重大なものだとは知らなかった。(もしかするとそう教えてもらったから覚えているのかもしれないけど、記憶にない。)

私がぼんやり覚えていたエントロピー増大の法則のイメージは「何でも拡散する」だったのだけど、これは「熱」力学の法則なので、エントロピーが増大するとはエネルギーの質が低下することであり、もう少し具体的に言うと仕事をする能力が劣化するということだそうな。

生命であればそれは死で、形あるものは何でも崩れ去るのがこの世の法則だとしても、生き物が生まれることはその法則に逆らうことなので、別の法則が要るはずだという話が面白い。

形作られては崩れて・・・を繰り返すこの世の仕組みを決めているものは何なんだろう。

とこの辺りまでは面白かったけど、かの有名な相対性理論が出てきたあたりからついて行けなくなった。

まあ、文系とか理系とか関係なく、このくらいは知っていないと、ということを私は知らなくて、これじゃいかんなということが分かったということで良しとしよう。

 

脳を鍛える―東大講義「人間の現在」 (新潮文庫)

脳を鍛える―東大講義「人間の現在」 (新潮文庫)

 

 

私のマルクス/佐藤優

著者である佐藤さんの、高校~大学(院)時代の話。主にその頃を共に過ごした友人や先生達について。

マルクスとかキリスト教とか、私はこれまで生きてきてほぼ考えたことがない種類の話なので、説明してもらっても殆ど意味がわからない。

それから大学内で何やら暴力的な事件が発生するのも、どういう状況なのかいまいちよく分からない。

時代のせいなのか?それとも生きている世界が違うのか?

生きている世界が違うと言えば、佐藤さんは高校一年生の頃に東欧の方に一人で旅行に行ったのだそうな。

しかも思い立ったのは中学三年の頃だというし。

私が同じ年の頃にそんなことは絶対に思わなかったな。この差は一体何なのか。

やっぱり、生きている世界が違うということなのか。

というわけで。

この方の本は他にも何冊か読んだことがあって、どれも面白いと思ったけど、これは残念ながら理解不能な点が多すぎてあまり楽しめなかったというのが率直な感想。

分かる範囲で思ったことは、こんなに若い頃から学びたいことが明確で、だからこそ専門家である大学の先生からも色々吸収できて、その賢さが羨ましいということ。

私も大学に通っていた頃は周りにすごい人が沢山いたかもしれないのに、受け入れる側の私の器ができていなかったので、殆ど何しに行ったのかという感じだな。

そう考えると、大人になってから大学に通ってみるのもいいかなあと思った。

私が学生の頃、子育てが落ち着いたくらいの女性が同じ学年にいたけど、その気持ちは分からなかったな。

 

私のマルクス (文春文庫)

私のマルクス (文春文庫)

 

 

国家なる幻影(上/下)/石原慎太郎

石原さんが国会議員をしていた頃の話しあれこれ。

ちなみに最近石原さんが豊洲移転問題で出てきたから読んでみようと思った、のではなく、偶然その前に買ってあった。

この本に東京都知事をやっていた頃のことは書かれていない。

 

石原さんは割と最近まで東京都知事をやっていたはずだけど、政治に関するニュースなんて気にかけるようになったのはごく最近なので、何か印象に残っていることがあるかというと特にない。

というわけで、この方は政治家であり作家であるということ以外はほとんど何も知らない状態で、この本を読んだ。

読み始めて思ったことは、文章が読みづらい。例えば「○○だが、○○だが、・・・」と一文がずるずる続く。

作家さんが書く文章なのに読みづらいとは、何か私が悪いのだろうか。とにかく読みづらかった。

 

内容はそれなりに面白いと思って読み進めたのだけど、感想を書こうとするとあまり出てこない。

全体的に人を見下したような言い方が多かったという印象。この人はこういう人なんだなと思った。

日本が核攻撃を受けたらアメリカが報復してくれるか、ということについて、アメリカがリスクを負ってまで他国のためにそんなことをするわけがないと書いてあって、確かにねと思った。

 

国家なる幻影〈上〉―わが政治への反回想 (文春文庫)
 

 

 

話を聞かない男、地図が読めない女/アラン・ピーズ+バーバラ・ピーズ

この本は、何年か前、と言ってももう大分昔だと思うけど、話題になっていたような気がする。

男女で脳の働きに違いがあり、それぞれ得意なことや苦手なことがあるよ、ということについて書いた本。

 

ずっと前に読み始めて、あまり目新しい内容がなかったからかいまいち読む気になれず、途中で読むのを止めてしまった。

やっと最後まで読んだけど、数か月放置していたせいで何が書かれていたか覚えていないし見直す気もないので、読んだという記録だけ残しておく。

 

「男らしく」とか「女らしく」とか育てられたからではなく、男と女で脳の作りに違いがあることはあるらしいけど、実感としては性差よりも個人差の方が大きいと感じる。

確かに時々、男性/女性特有かなあと思うことはあるけれど。

 

話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く

話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く

 

 

キャパになれなかったカメラマン(下)/平敷安常

米ABC放送のカメラマンだった著者が、ベトナム戦争の取材中に出会った人々などについて書いた本。

 

10年もこの戦争を取材し続けただなんて。途中で嫌になったとは一言も書いていなかったけど、思わなかったんだろうか。それとも書けなかったんだろうか。

彼の仲間たちもむしろ意欲的に取材に向かっているように書かれている。やりがいがストレスを上回るのかもしれない。もしくは向いてそうな人が配置されるのか。

 

著者は南北ベトナムのどちらの敵でも味方でもないけれど、取材仲間が戦闘に巻き込まれて亡くなった時、殺した側を敵と認識し、憎しみを抱いたと書いている。

そう考えると、当時ベトナムに住んでいて戦闘に関わっていない人達も相手側が憎いわけではなく、国が戦争を始めてしまって巻き込まれて、迷惑でしかないだろうなあ。

 

戦争に行っていた兵士がPTSDに悩まされるという話を聞いたことがあるけど、ジャーナリストも同じような症状に悩まされる人がいるらしい。

戦後、著者の仲間に上記の件も含めたアンケートを行ったところ、そのうちの一人が「ジャーナリストは兵士と違って逃げようと思えば逃げられるので、兵士とは緊張感が違う(だから自分はそういう後遺症には悩まされなかった)」というようなことを書いていたそうだ。

そうは言っても、戦場からなかなか脱出できなかったという話もこの本に書かれているし、ジャーナリストから何人も死者が出ているので、命懸けの仕事だと思う。

10年もそんな場所で平静を保ち続け、生き残ったということは、すごいことなのではないかな。

 

 

ファミリー・シークレット/柳美里

作家の柳美里さんが、息子さんにしてしまうこと、境遇の似た女性へのインタビュー、自身が受けた虐待について書いた本。

 

親子のやり取り

出だしは、柳美里さんと息子さんとのやり取りから始まる。

息子さんの言動が明らかに異常なのに、まず最初にそこを心配しないことが恐ろしい。

日常的に繰り広げられていると思われる親子の会話、と言うか親から子への罵声がつらい。

相手を思い切り罵ってやりたいと思う気持ち、それをやってしまった後の罪悪感、そんなことはしたくないのに毎回同じパターンにはまってしまう無力感。

 

ある虐待母

何故か突然、よく似た境遇の母親に会いに行き、話を聞いている。

この人に関して一番印象に残っている話は・・・

あることをきっかけに、実家に死ね等と恨みごとを書いた手紙を何度か送ったら、父親から電話がかかってきたそうな。

「今すぐ来い」と言ったら、来たのは母親だった。しかも結婚後初めて来たって。そんなんありかと思うけど、そういう家なんだろう。

ここで、「私が子供にどんなことをしたか教えてやる」と、子供にした虐待の内容を言いながら母親を殴りまくったという3行くらいで何だか泣きそうになってしまった。

3行ではさすがに泣かないけど、もっと事細かに当時の心境など書かれていたら多分泣いていた。

自分にここまでの経験はないけど、してもらいたいと思っていたことをしてもらえなくて怒ったり悲しんだりしたことを思い出す。

 

柳美里さんのカウンセリングと虐待の経験

柳美里さんが、カウンセリングを受けるまで親からされたことを虐待だと認識しておらず、カウンセラーの長谷川さんに何度も「私は虐待を受けたんですか?」と聞いていたのが印象的だった。

 虐待の被害者が、自分が虐待を受けていると気付かないという話はよく聞くけれど、もう親元を離れて何年も経っているし、真冬に裸で外に放り出されるだとか凄まじいことをされているし、カウンセリングを受けた当時40歳を超えていたので、さすがにあれはおかしかったと分かっているものじゃないかと思ったので。

けれど、当事者は分からないものなんだな。自分の身に起こったことだったらと思うと、そんな気もする。

 

そんな感じで柳美里さんは凄まじい生い立ちだと思ったのだけど、このカウンセリングをきっかけとしてついに何年もまともに話をしていないと思われる父親と対面で話すことになり、真実は分からなくなる。

柳美里さんの言うことと彼女の父親の言うことが全く合わない。

物事の受け取り方は人それぞれで、人間の記憶というものはいかに曖昧か。

私も人を恨むことはあるけれど、こちらの一方的な思い込みかもしれない。と思うと、人を恨んでも本当に何もいいことはないなあ。

 

この方の名前は以前から知っていたけど、今回初めて本を読んだ。

こんな過酷な経験をしてきた方だったとは。

他の作品は全てフィクションだと思うけど、経験をもとにした内容が少し形を変えて散りばめられているらしい。

(多分作家さんは、多かれ少なかれ誰でもそうだと思うけど。)

機会があったら読んでみるかも。

 

ファミリー・シークレット (講談社文庫)

ファミリー・シークレット (講談社文庫)

 

 

世界にひとつしかない「黄金の人生設計」/橘玲

主に不動産の要否と保険の要否、それから日本の年金や医療保険の現状と今後の見通しについて書かれた本。

興味深い、という意味で面白かった。一部面倒臭い話は流し読みしてしまったけど。(かなり分かりやすく書いてくれているのだろうとは思ったけど・・・。)

ここに書かれていることが「正解」かどうかは分からないけれど、考え方の一つとして頭に入れておきたい。

 

不動産(持ち家)について、なるほどと思ったこと
  • 不動産を購入することは投資と同じであり、株などを購入することとの違いは、資産を何で持つかの違いでしかない。
  • 不動産は購入した瞬間から中古となり、以降は年月が経つにつれて価値が下がる。また、維持・管理のため保有しているだけでコストがかかる。

 

保険について、なるほどと思ったこと
  • 保険は当たらなければもらえないという意味でギャンブルと同じ。

とりあえず、ずっと前に入った掛け捨てのやっすいやつだけ入ってるけど、正解だったかもしれない。

今となっては貯金が沢山あるので、保険要らないのではという気すらしているけど、解除するのはちょっと勇気が要るかなあ。

 

年金や医療保険について、なるほどと思ったこと
  • 会社員になれば、厚生年金の保険料は会社が半分払ってくれるという話は、「物は言いよう」かもしれない。(社長がポケットマネーから払ってくれるわけではなく、お金の出どころは給料と同じなので、本来給料として支払われるお金から差し引かれているとも考えられる。)

 

いやー、色々知らないと困るねえ。

 

世界にひとつしかない「黄金の人生設計」

世界にひとつしかない「黄金の人生設計」