ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか/NHKスペシャル取材班

ヒトの進化を、心の面から考えた本。人類の心が、現在のような心にどのように変化してきたか、人間と他の動物の心の違いは何か、など。

この本の内容がNHKスペシャル(テレビ番組)で放送されたはずだけれど、映像と文章では表現できるものが違うと思うので、テレビと同じ内容ではないかもしれない。

 

沢山いた人類、残ったのは一種

ネアンデルタール人やら北京原人やら授業で習った気がするけれど、残ったのはホモ・サピエンスのみらしい。つまり現在生きている人間の祖先はみんなホモ・サピエンスで、他は絶滅してしまったのだそうな。

それぞれの地域の人類が進化して、今の人種の違いになっているんだと思っていた・・・。学校で習ったんだったかなあ。○○人だとか、単語は覚えているけど、何がどうなったかということは全然覚えていないなあ。

 

優しいのは身内だけ

身内に対して利己的 or 利他的、対外的に友好 or 非友好 の組み合わせで4グループ(身内2パターン×対外2パターン=4パターン)用意し、どの集団が繁栄するか何万回もシミュレートすると、最終的に優勢になるのは身内に利他的、対外的に非友好なグループなのだとか。

先日凶悪を読んだときに、人に平気で酷いことをする人でも身内は妙に大事にするんだなあと思ったが、どうもヒトの生き残りのために刻み込まれた心のありようということらしい。現代ではあまり必要がなくなった考え方のはずだけど、そういう人は理性的ではなく、野性的というか原始的というか、きっと本能のようなものに従って生きているということなのだね。

 

未来について考えられるのは人間だけ

人間に近いと言われるチンパンジーでも、相手から求められれば手助けをするけれど、相手の様子を見て自発的に手を貸しはしないし、何かしてもらってもお返しをするということはないそうだ。その理由は、彼らがその瞬間のことしか考えておらず、「情けは人の為ならず」ということは考えられないからだ。

人類が未来について考えるようになった理由としては、その日暮らしの狩猟採集生活から農耕社会(作物を育てるには先のことを考える必要がある)になったことや、貨幣(長期間貯蔵しておける富)が使われるようになったことが大きく影響しているらしい。

同様に、過去や遠い場所で起こっていることなど、目の前にないものについて考えられるのは人間だけだそうな。

 

テレビ番組を作るって大変だ

この本一冊の内容がテレビ番組何時間で放送されたのかは知らない。4章に分かれているので4時間なのかな?きっとそんなものなのだろうけど、テレビを見る方はたった4時間だし、多くの人の記憶に長く残るとも限らないのに、取材をして番組を作るのはどれだけの労力や時間がかかっていることやら。大変な仕事だ。

 

ヒューマン  なぜヒトは人間になれたのか

ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか

 

 

野中広務 差別と権力/魚住昭

私は部落差別というものがあることをいつ知ったのだったか。社会人になってからだったかもしれない。少なくとも私の知る限り、身近にそういうものはなかったので。

場所によって違うのかもしれないが、野中さんの出身地の部落は、江戸時代に人や動物の死体処理をしていた人達が起源らしい。

この話を聞いて、その人達の子孫を何か悪く思うかというと私は全く思わない。けれど、生まれた時から身の回りにそういう人達を差別する風潮があると、多分理屈ではなくそういう気持ちが湧いてくるものなんだろう。

 

野中さんは部落の出身だったせいで総理になれなかったと書いてあったのだけど、部落が育った場所の近くになかった人達も、そんなことを気にするものなのだろうか。

麻生さんが何やらきついことを言ったようだけど、歳が上の方の人にとっては身近な問題なのか。

 

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

 

 

将国のアルタイル 1~19巻/カトウコトノ

一応架空の国だけど、実際の歴史も織り交ぜた世界を舞台にした、戦争と政治の話。

ちょうどつい最近読んだ本の内容と重なる部分があって、興味深く読んだ。政治面の話はまさに国家の謀略でいうところのインテリジェンスの話だし、それから自壊する帝国に帝国とは何かということが語られていたなあ、と。

 

主人公は、史上最年少の17歳でトルキエの将軍となったマフムート。軍人になる為の学校を、12歳で首席で卒業している。

その点は天才と言っても過言ではないのだけど、そうは言ってもまだ17歳なので、将軍になりたての頃は、国全体にとっては何が最善か、という事までには考えが至らない。それで、人としては良いことだけど将軍としては不適格な行動をとってしまう。

けれどその後は、軍事面でも政治面でも頭角を現していく。

 

ちなみにこの国の将軍は軍隊を率いるだけでなく、政治もやる。(絶対激務だな・・・。)

トルキエの原型は国名等の条件から考えてトルコだと思うけど、あの辺りでパシャ(将軍)、スルタン(将王)という役職があったことや将軍が政治をやっていたことを、歴史の授業で習ったのか、聞き覚えがある気がする。

周辺の国々のことも含め、この漫画は世界史に詳しければより面白いと思うのだけど、私はあまり知識がなくて残念。

 

主人公がトルキエにいるので、読者は主にトルキエ側からこの世界を見る事になるのだけど、対するバルトライン帝国側が悪かというとそうとは言えない。どちらも自国の為を思って行動しているだけなので。そう考えると主人公が属するトルキエが勝てば万事OKでもない。どんな終わり方をするのか。めでたしめでたしで終わるとも限らないけど。

 

将国のアルタイル(19) (シリウスKC)

将国のアルタイル(19) (シリウスKC)

 

 

国家の謀略/佐藤優

佐藤さんがSAPIOという雑誌で連載していた内容をまとめた本。

当初は(佐藤さんの)公判への影響と外務省からの妨害を考慮して、ペンネームを使って記事を書いていたらしい。

 

全体的に面白かったのだけど、短い記事がいくつも収められているので、どこがと言うとちょっと難しい。

記憶に残っていることを挙げると、

 

  • インテリジェンス能力の高さは国力と大体比例する。
  • ただしアメリカはそれほどでもない。理由は、他国より圧倒的に強く、インテリジェンス能力がなくても力で押し切れるから。
  • 日本は戦前、戦中はインテリジェンス能力が高かった。

 

ちなみにインテリジェンスとは情報を扱う能力を指すらしい。

例えば情報を収集する、集めた情報を分析する、情報を取られないようにする、人に取り入る、こちらに有利になるよう相手に情報を出す、などの能力。

この本を仕事に役立ててくださいと書いてあり、国家間だとか規模の大きな話なのでさすがに実用的とまではいかないけれど、確かに似たようなことは仕事でよくある。

 

それにしても、今はもしかすると他国と比較して平和ぼけしているかもしれない日本が、インテリジェンス能力が高かっただなんて意外な感じがする。

 

それからこれは多分最後の方に書いてあったのでよく覚えているのだけど、古典や神話を読むとその発祥の地に住む人々に刷り込まれている考え方が分かると書いてあって、日本なら古事記を読むと良いそうだ。

歴史を学びなさいというのと同じようなことだね。

古事記ってどんなことが書いてあるのだっけ・・・確か因幡の白兎とか。ちょっと読んでみようかな・・・。

 

国家の謀略

国家の謀略

 

 

凶悪/「新潮45」編集部編

新潮45編集長である著者のもとに、ある死刑囚が、まだ明るみになっていない自身の余罪を告発したがっているという話が舞い込む。

それらの事件の首謀者は「先生」と呼ばれる人物であり、いくつもの犯罪を犯したはずの彼は未だ娑婆にいるという。

死刑囚・後藤の告白と、告白をもとにした著者・宮本さんの調査により徐々に事実が明らかになり、そしてついに・・・。

私はこの事件のことは知らなかったけれど、ノンフィクションである。

 

持ちやすいからという理由で文庫版を選んだのだけれど、これは絶対に文庫版を読むべき。

なぜなら文庫版書き下ろしの最終章に、おそらく多くの人が最も知りたいことが書かれているから。

ただし読むのはちょっとだけつらい。

 

復讐の覚悟

身元引受人を解除すると、万が一減刑されても、外に出られる可能性がゼロになるらしい。

記事が公になる直前、後藤はそれを実行した。

後藤が余罪を告発するに至った最も大きな理由は、生活能力がない舎弟の面倒を見ず自殺させてしまった「先生」への復讐だというのだけど、自分は散々人を殺しておいてそれが一番の理由であり、外に出る可能性を自ら放棄するほどの覚悟に至るとは、正直私はしっくりこない。

生活能力がないとは具体的にどういうことなのかとか、後藤がその舎弟をどう可愛がっていたとかは書かれていないので分からないし、そもそもこういう人の思考についてまともに考えても仕方がないのかもしれないけど。

 

簡単に人を殺すのに、人を大事にもする

「先生」にしても後藤にしても、人間全てに対して残酷なのではなく、気に入った人間がいたり、家族は大事にしていたりする。

人に対してあんなに酷いことができるのに。

身内とそれ以外に対する扱いが極端だというこということなんだろうか。

宮本さんは後藤の告白の姿勢については真摯なものを感じたけれど、同情はできないと書いている。自分と同じ人間ではなく、特殊な人間であると。

これらの人たちは、生まれた時から特殊なんだろうか。それとも育ちが悪くて歪んでしまったのか。

どちらにしろ、多分こういう人たちは悪いことをあまり悪いと思っていないのだろうと思う。

すると悪意を持って犯罪を犯しているわけではないないので、「凶悪」な人間というのは何だか少し違うような気もする。

 

きっとたくさんいる

後藤も「先生」も、本の中に写真が掲載されている。

後藤のヤクザ時代の写真はまあヤクザっぽいけれど、「先生」なんて本当に特別目立つわけでもない、そこら辺にいそうな人だ。

この事件はきっと氷山のほんの一角で、「先生」のような人間は沢山いるんだろうと思う。

それから、先生のような人間に人知れず葬られてしまった人たちも。

お金をたくさん持っているとか、普段からあまり人付き合いがないとか、危ない。気を付けよう。

 

凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)

凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)

 

 

自壊する帝国/佐藤優

佐藤さんが外務省職員としてモスクワに勤務していた時に、ソ連が崩壊した。

その頃に出合った、ソ連崩壊を画策する人達などについてのお話。

 

ソ連は複数の国が集まってできていたけれど、それらが個別の国になったということらしい。

最後の方のゴタゴタでそうなったんだろうということくらいは分かるけども、具体的にどのタイミングでそうなったのかはよく分からなかった。

 

自分が住んでいる国が崩壊すればいいと思う気持ちとは。

そんなことは考えたこともないな。日本が良い国だということなのか、私が何も知らないだけなのか。

一般の大学生の会話まで盗聴されるというのはかなり異常だと思うけど、崩壊を望んだ人たちはそういうところが嫌だったのか?

 

私はサーシャについて何となくあまりいい気がしていなかったのだけど、最後に会った時、彼がパートナーをとっかえひっかえしている様子を見て、佐藤さんもさすがにいい気はしなかったらしい。

けれど、佐藤さんが逮捕される直前にサーシャからメールが届き、佐藤さんがそのメールを何度も読み返した後返事を書かずに削除する辺りを読んで、何とも言えない気持ちになった。

もう連絡は取りあっていないのかな。

 

自壊する帝国

自壊する帝国

 

 

ぼくらの頭脳の鍛え方/立花隆・佐藤優

立花さんと佐藤さんがそれぞれお勧めの本を200冊くらいピックアップし、その本を紹介する理由などについての対談の内容をまとめた本。

読んだことがないのだから本当のところは分からないけれど、正直に言ってここで紹介されている本の殆どは私が読んでもあまり楽しめそうにない気がするし、沢山ありすぎてメモできないので、特にここで紹介された本を読む予定はない。

興味を持つことがあればその時に出会えるでしょう。

ただ、紹介されていた本のうち2冊だけは、以前読もうとしたけど読んでいなかった本だったので、その2冊だけはそのうち読むつもりでメモしておいた。

 

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)