国家の罠/佐藤優

鈴木宗男事件の当時、外務省に勤めていた佐藤優氏が、外務省の金を不正に使用したことや、北方領土へのディーゼル発電事業で自身の利益になるよう、特定の業者が工事を受注できるようにしたなどの疑いで、逮捕された時の話。

検察側は事件としてストーリーを作りたいので、ある程度罪を認めて折り合いを付ければそこそこで解放されるのだけど、この方が価値を置いたのは国益やこれまでやってきたことに対する筋を通すことだったので、無罪を主張し続けた。

 

情報のプロである佐藤氏と、取り調べを担当した西村検事とのやりとりが見どころ。

佐藤氏は冷静に状況を観察・分析して、自身の守るべきものを守るための出方を探る。

西村検事は、検事としての責務をきちんとこなしながらも、佐藤氏の意志を尊重している。

お互いの立場上相容れない部分がありながら、段々と戦友みたいになっていくのが面白い。

それよりなによりこの二人、会話が始まると大体イチャイチャし出しすのでニヤニヤしながら読んだ。

 

本の裏表紙などに情報のプロと書いてあったので上でそう書いたけど、佐藤氏は、相手がどういう人間であるかを理解すること、そしてそれをもとに相手にどうアプローチするかということにかけて、プロなんだなあ。

国も人種も違う人達を相手にするには、こういう能力が必要なんだろうな。

(外交に携わる人、誰もが同じようにできるのか分からないけど。)

そして昼も夜もない激務なので、能力的にも体力的にも、とても自分には務まらない仕事だ。

佐藤氏が、刑務所に入ってゆっくりできて良かったと言うのも納得できる。

 

あと、刑務所のご飯は美味しそうである。

特にお正月のご飯、私そんなに食べられない。どうしよう。

 

とても面白かったので、この方の他の本も読んでみたい。

 

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)