檻のなかの子/トリイ・ヘイデン

この本の著者であるトリイ・ヘイデンさんは、心理的・器質的に問題のある子供たちの手助けをしている人である。

(以前は教職に就いていたようだけど、この本の頃には、カウンセラーとかセラピストのような仕事をしている模様。職種が何なのかはよく分からない。)

この本には、トリイさんと、彼女が面倒を見ることになった、8年間誰とも口をきかなかった少年との出来事について書かれている。

 

このシリーズは他にもいくつか読んだことがあるのだけど、何故かいつものめり込んでしまう。

トリイさんは、こんな大変な仕事をしているのにそこら辺にいそうな感じの人で、私から見るとすごくどうでもいいことでうだうだ言っているようなこともある。

けれど、仕事に関する悩みや問題への向き合い方は共感するところがあるし、彼女が相手をする人達が、良くなったり悪くなったりするのを読んで嬉しくなったりがっかりしたりする。

そういうところがこのシリーズの魅力なんだろうと思う。

 

このシリーズに登場する人達は、世の中で色々な問題を抱えている人達のほんの一部だし、そのほんの一部の彼らも、救われるとは限らない。

この本の最後も一応はハッピーエンドだけれど、彼がその後の人生もうまくやって行けたかどうかは分からない。

言ってしまえば焼け石に水のように思ってしまう。

トリイさんもそれが分かっているし何度も絶望するけれど、それでも何度も立ち向かう。

きっと使命感とか正義感ではなく、本人も言っているけれどこの仕事に魅せられているということなんだろうと思う。

大変さとやりがいを天秤にかけてやりがいを選んでしまう気持ちも、分からなくはないよ。

 

檻のなかの子―憎悪にとらわれた少年の物語 (トリイ・ヘイデン文庫)

檻のなかの子―憎悪にとらわれた少年の物語 (トリイ・ヘイデン文庫)