キャパになれなかったカメラマン(下)/平敷安常

米ABC放送のカメラマンだった著者が、ベトナム戦争の取材中に出会った人々などについて書いた本。

 

10年もこの戦争を取材し続けただなんて。途中で嫌になったとは一言も書いていなかったけど、思わなかったんだろうか。それとも書けなかったんだろうか。

彼の仲間たちもむしろ意欲的に取材に向かっているように書かれている。やりがいがストレスを上回るのかもしれない。もしくは向いてそうな人が配置されるのか。

 

著者は南北ベトナムのどちらの敵でも味方でもないけれど、取材仲間が戦闘に巻き込まれて亡くなった時、殺した側を敵と認識し、憎しみを抱いたと書いている。

そう考えると、当時ベトナムに住んでいて戦闘に関わっていない人達も相手側が憎いわけではなく、国が戦争を始めてしまって巻き込まれて、迷惑でしかないだろうなあ。

 

戦争に行っていた兵士がPTSDに悩まされるという話を聞いたことがあるけど、ジャーナリストも同じような症状に悩まされる人がいるらしい。

戦後、著者の仲間に上記の件も含めたアンケートを行ったところ、そのうちの一人が「ジャーナリストは兵士と違って逃げようと思えば逃げられるので、兵士とは緊張感が違う(だから自分はそういう後遺症には悩まされなかった)」というようなことを書いていたそうだ。

そうは言っても、戦場からなかなか脱出できなかったという話もこの本に書かれているし、ジャーナリストから何人も死者が出ているので、命懸けの仕事だと思う。

10年もそんな場所で平静を保ち続け、生き残ったということは、すごいことなのではないかな。