紳士協定/佐藤優

佐藤さんが外務省の語学研修のためイギリスに留学した際に出会った、ホームステイ先家族の末っ子グレンが主な登場人物。

若手の外務省職員と12歳の男の子は、お互いの勉強を助け合うという紳士協定を結んだ。

 

イギリスは階級の移動が日本よりずっと小さいらしい。確かに私は階級なんて意識したことがない。私が偶々そういうことを意識する環境で生きていないだけなのかもしれないけれど、多分多くの日本人は私と同じなのではないかな。

私の親は大学を出ていないけど、私は大学を出た。仮に私が実際に行った大学よりももっと良い大学に行けたとしても、階級について考え、躊躇することはないと思うけれど、グレンは大学に行くかどうかを悩んでいた。大学に行くと、親とは違う世界で生きることになるかららしい。そんなに生き方が変わるものなのか。そのことがそんなに問題なのか。その辺りが日本とは考え方が違うということなのか。

結局グレンは大学に行かないことを選択する。人それぞれに理由があってのことなので何とも言えないけれど、せっかく意欲や才能があるのに、私からすると謎の理由でやりたいことを諦めなければならないなんて、残念な気がする。

 

殆どグレンとのやりとりがメインだけれど、もう一人の主な登場人物は同期の武藤さん。この方は佐藤さんの他の本でも時々登場する。佐藤さんの本をいくつか読んでいると、同じ人物がちょこちょこ出てきて、まるでCLAMPワールドのようだ(笑)。

それはそうとあとがきで、佐藤さんが逮捕された時、外務省が、佐藤さんを告発するための調査責任者を武藤さんにやらせた、という話が出てきた。この話自体は他の本でも見たことがあったけれど、この本で二人が仲互いしたわけではないのに徐々に距離が離れていく様子を見ていたので、何だか切なくなった。

  

紳士協定―私のイギリス物語

紳士協定―私のイギリス物語