失われてゆく、我々の内なる細菌/マーティン・J・ブレイザー

人の体には常在菌がいる、という話は聞いたことがあるけれど、どのくらいの菌がいるかというと、人1人の細胞の数が30兆個に対して、細菌や真菌の数は100兆個なんだとか。

重さでは人の脳の重さと同じくらいで、種類は1万程度らしい。

この、人と共生している細菌の群れをマイクロバイオームと呼ぶ。

私はこの単語を初めて聞いた。腸にいる細菌の群れを腸内フローラと呼ぶのは聞いたことがあるけど、この本には腸内フローラという言葉は出てこなかった(はず)。

 

そもそも地球には、私たちの目には見えないけれど沢山の微生物がいて、その数も重さも、目に見える生物(植物も含む)を超える。

そしてそれらの微生物がいなければ、私たちはものを食べたり呼吸をしたりすることもできないけれど、微生物たちは人がいなくても生きることができるし、微生物たちが地球に誕生してからこれまでの時間を24時間とすると、原生人類が現れたのは午前零時のたった2秒前なんだそうな。

つまり地球は、人間が自分たちの星のように思っているけど、本当は微生物の星なんだ。

人類が滅びても微生物たちが末永く楽しく暮らしていくのなら、それはそれでいいかもしれない。

 

タイトルでの通り、著者は、私たちと共生している細菌たちが抗生物質の使用などにより失われつつあると言っている。そして細菌を失ったことが、肥満や糖尿病や花粉症などを起こす原因になっているのではないかとも。

私たちはいつから細菌と共生しているのかというと、お腹の中にいるときは無菌で、産道を通る時と生まれた直後に、母親と生まれた時に周囲にいた人達から、何兆個もの細菌を受け取る。

(成長してから他の人との接触などで細菌を受け取っても、あまり定着しないらしい。なので、大体生涯同じ細菌と暮らす。)

だから、帝王切開によって出生率は上がったけれど、通常の出産であれば母親から受け継ぐはずだった細菌が子供に受け継がれない問題も指摘している。

もちろん、抗生物質帝王切開により死なずに済んだ人が沢山いて、それらが全面的に悪いわけではない。

要は、苦しむ理由が変わっただけということだと思う。早く死ぬか、長生きできるけど苦しむか。

 

失われてゆく、我々の内なる細菌

失われてゆく、我々の内なる細菌