スタープレイヤー/恒川光太郎

突然異世界に飛ばされ、10個の(ほぼ何でもできる)願いを叶えることができるスターボードを授かるというお話。

異世界に来たのは元の人間のコピーで、異世界から去ろうとすると、元の世界に戻るのではなくコピーが消えるいうシステムはいいな。それだったら元の世界を心配して戻ろうとする必要はなく、異世界の方で好きに暮らせばよいので。

もし自分がスタープレイヤーになったら、夕月のようにものを得ることに願いを使うよりは、何らかの能力を得る方がいいな。透明人間になる能力を得た人が出てきたけど、そういう感じの、通常の人間には得られない能力がいい。

夕月に近付いてきた人たちが基本的に良い人ばかりだったので安心して読めたけど、システムに関して嘘を教えるとか知らないことを逆手にとって騙すとか、悪い人が近付いてきた方がお話としては面白かったかもしれない。話が長くなってしまいそうだけど。

 

ドールハウス/姫野カオルコ

江木・・・腹の立つ奴め。まず、ほぼ初対面の女性の顔に触るなんておかしい。何だこの人はと思ったけど、理加子が嫌がっていないからまあいいかと思っていたのに、そうやってグイグイ来ておきながら、別れ際にきちんと相手に向き合おうとしない卑怯者。よく知らない相手に向かってお前は悲しい思いをしたことがないんだろうと言い放つ浅はかさ。そして30にもなって、避妊を強制されたなんてせりふを吐くとは呆れ果てる。こんな奴とは早急に縁を切って正解だ。

あとがきに理加子は未熟だと書かれていたけど、江木に落とし前を付けろって言いに行けるんだからいいじゃないか。子供の頃からあんな家で育てられたら、自分を優先できないのは仕方がないでしょ。

 

ルームメイツ(1)~(4)/近藤ようこ

歳をとってから、昔の友達と一緒に暮らす。ちょっといいかも、とは思うけど。

もしそういう機会があったとしても、踏み出せるかというとどうだろう。寄り添う時に刺さる針の痛さよりも一人の寒さの方が何倍もましだと思っているので。慣れるかもしれないけど、耐えられるかどうかも分からないからなあ。もっと歳をとると考え方が変わるかもしれないけど。

 

酔うと化け物になる父がつらい/菊池真理子

気の毒だなあ。こんなの子供にはどうしようもない。大人でも対処に困る。

適切な治療を受ければ良くなるのかもしれないけど、まずそのことが思いつけないかもしれないし、通える距離にそういった施設がないかもしれないし、あっても本人が拒否すれば通わせることはできない。

私が普通の家で育つことができたのは、運が良かったと思う。

 

メンタルの強化書/佐藤優

新自由主義、勝ち組/負け組、自己責任が蔓延る世の中で、精神を消耗しない働き方、生き方について書いた本。

私は仕事に関してはある意味競争の土俵から降りることを選んだので、今は以前に比べてとても働くのが楽になり、メンタルが削られるなどで困っているわけではないけど、久々に佐藤さんの本を見かけたので読んでみた。

 

困っていないと書いたけど、考えてみれば、不安に感じてはいるのだと思う。朝目覚ましが鳴るよりもずいぶん早く目が覚めてしまうのは多分そのせいだ。今はいいけど、将来まで安泰かどうかは分からないので、今のままでいいのか、何かしなければという思いはある。

 

働き方改革は、私はほぼ影響がないけど、会社に勤めている人の話を聞くと、上は残業するなというだけで仕事量が減らず苦しいとか、持ち帰って仕事をしているとか、休日の夜中にもすぐにメールの返事が来るとか。ですよね。気の毒だけど何ともならない。

そういう状態の人から、私の方が稼いでると言われたけど、生涯年収は私の方が低いでしょうと言っておいた。事実はどうか知らないけど、何にしても、日々の苦しみから解放されたことが何より価値のあることだと感じる。

 

国はどうして急に国民の働き方を心配し始めたのか。佐藤さん曰く、少子高齢化で労働力が減るから、すり減らない程度に細く長く働いてもらいましょうということではないかと。あ、そうか。

 

サリエルの命題/楡周平

この本に、厚生労働省で定められたワクチン接種の優先順位というものが存在すると書かれているので探してみたけど、新型コロナウイルス用のが出てきてしまって、ちょっと検索してみただけでは見つけられなかった。

その優先順では、基本的に将来を担う若い人を優先して高齢者の優先順位は低いということのようだけど、新型コロナウイルスのワクチンの優先順位は高齢者が優先だったな。

新型コロナウイルスは感染力も致死率もそこまで高くないし、ワクチンは国民全員に行き渡るほどあったので、全員助ける方向で優先順位を付けることができたのだろうけど。

でも仮にこの話のように、もっと感染力も致死率も高い感染症が日本で見つかって、ワクチンがなく、治療薬はほんの少ししかないという状況になった時、あなたは優先順位が低いので、あなたの分の治療薬はありませんと言われたとしても、私は納得すると思うけどな。優先順位は必要だと思うし、誰かが決めるしかないのだから。

 

うそつき、うそつき/清水杜氏彦

あらら、まさかこんな救いのない終わり方をするとは。

嘘をつくと赤く光る首輪、試しに1か月くらい皆つけてみるのは面白いかもしれない。

どうだろう、人と話すのが嫌になるかな。お互いに首輪が見える状態での会話を誰もしなくなるかも。