隣人X/パリュスあや子

宇宙人を難民として受け入れることにした世界、という設定があるのだけど、その設定が前面には出てこない。

その宇宙人は、人間の情報をスキャンすると、姿かたちから知識まで全て再現できるという設定で、不都合が起こらないよう、スキャンさせる情報は平均的な人間のものを用意したということなのだけど、現実的には大分難しいような気がする。

そこそこ悪くないポジションで、簡単に社会に溶け込めるなんて不平等だとか思ったけど、それ以前に得体が知れないから無理だろうな。

 

Aではない君と/薬丸岳

心と体、どちらを殺すのが悪いって、そこはどちらもって言うところでしょ。

元はと言えば藤井家の親子関係が悪いのが問題で、優斗も心が死にそうだったわけで。だからと言って青葉家の大事な家族を殺していいわけでもないし、その報復として優斗が死んでいいわけでもない。死んでしまったら反省させることもできない。

問題が起こっていることに、気付けないことはなかったように思う。だけど気付けなかったんだよなあ。

家族の誰かが犯罪を犯すと、他の家族が大変な目に合う。そういうものだということは分かるけど、血がつながっているとか、一緒に暮らしているだけなのに、何だろうな。

 

今夜、すべてのバーで/中島らも

アル中怖い。私自身は、お酒の味は嫌いじゃないし普通に飲めるが、酔うと色々なことがシャキシャキできなくなるし、余計なことを言ってしまったりして面倒臭いので、必要でなければ飲まない。酔って何かを忘れたいとかいった気持ちもないので、体を壊してまでお酒を飲みたいという気持ちは分からない。

 

中島らもさんの文章は初めて読んだ気がする。「婆さんはいま、案山子の正体を知ったカラスになって、じわじわと一本足の吉田老に近づいていくのだった。」とか、素敵な言い回しがちらほらとあって、他の作品も読んでみたくなった。

 

ヘルドッグス/深町秋生

笑いあり涙あり。ただしいい話なわけではなく、もうやめてくれと何度思ったことか。地獄すぎて笑うしかない。室岡だけが心の癒し。

こんな仕事、まともな人間にはやれないだろう。どいつもこいつもいかれているけど、兼高もある意味狂っているのか。

 

 

再雇用警察官/姉小路祐

自分の将来を投げ打って、姪と両親の世話か。他に手がないのであれば腹を括るしかないけど、何らかのモチベーションがないとやれないなあ。想像すると過酷すぎるような気がしてしまうけど、辛いことばかりではないからやれたんだろうか。

 

Winny/壇俊光

裁判に7年半か。こんなに長い間自由を奪われて人生が滅茶苦茶になるのだったら、嘘をついてお金を払って終わりにしてしまいたくなるかもしれない。でも、やってもいないことをやったというのは嫌だしなあ。

 

黒い紙/堂場瞬一

同じ職場で近しい人が亡くなったら、その仕事を辞めたくなる?ちょっと想像がつかないけど、もしかするとそれはきっかけであって、元々その仕事があまり好きではなかったのではないかという気もする。

何にせよ、まだ若いのだから他の仕事もやってみたらいいのであって、今どき仕事を辞めたからといってそんなに落ち込むこともないだろう。まあ警察は、一度辞めたらもう一度入りなおすことはできないのだろうけど。