猿の見る夢/桐野夏生

本の帯に「これまでで一番愛おしい男を書いた」と書かれていて、ええー、こんな奴のどこが?と思ったけど、何故か段々と気の毒になってきて、終わり頃には応援するような気分に。 不倫で揉めるのは私の知ったことではないが、家族や親族間の揉め事は私にもあ…

虚国/香納諒一

時々読む別の作家さんと雰囲気が似ている。 この間別の本を読んだとき、主人公の心の声の一人称と人に話すときの一人称が違っていて違和感を覚えたのだけど、この主人公もそうだった。私は常に私なので、どういう感覚なのか分からないのだけど、考え事をする…

炎罪/鏑木蓮

病気が治って真実が分かったのはいいけど、この人を罪に問えるかどうかはまた別の問題なんだろうなあ。 主人公の女性が結構きついことを言っていたけれど、それはどうなのかと思った。病気がなければあんなことはしなかったのだろうから。 炎罪 (講談社文庫)…

誤断/堂場瞬一

会社から、倫理に反することをやれと言われたらどうするか。 そんなことをしたら心を病むし、出世してもあまりメリットがあるとは思えないので、やりたくない。と言いたいけど、言えるだろうか。うーんまあ状況によるけど、従った場合のデメリットの方が大き…

ラストレシピ/田中経一

日本ではどうか分からないけど、死刑囚が死ぬ前に何でも好きなものを食べさせてもらえるという話がある。それを知って、自分だったら何を頼むかなと考えたことがあるけど、お腹に物が入っていると死ぬときに汚いことになりそうなので、要らないと言いそうだ…

母さん、ごめん。/松浦晋也

認知症になった母親を介護した男性が書いた本なのだけど、読んでいてつらくなる。 肉親だと甘えがあって、かえって言うことを聞いてくれないこともあるのか。良かれと思って色々やっても、病気のせいとはいえ、攻撃的な態度をとられると・・・つらい。 奥さ…

死にたい老人/木谷恭介

著者は餓死をしようとしたけれど、断念したそうだ。断食をしている間に調子が悪くなってしまうとうまく死ねないので、餓死をするには健康でなければ難しいのだと。 餓死は死ぬまでに時間がかかって、長期間苦しむし、その間に断念せざるを得ない割り込みが入…

清明/今野敏

タイトルの文言が話の中に出てくるのは、私が覚えている範囲ではこれ以外だと初陣くらいじゃなかろうか。他はタイトルと中身があまり関係ないなと思っていた。私が気にしていなかっただけで、よく考えると関連があるのかもしれないけど。 県をまたぐと、竜崎…

棲月/今野敏

竜崎は原理原則に従って生きていると言うけれど、私は度々、何だかこの前と言っていることが合わない気がするなと思うことがある。きちんと検証したわけではないので、私の思い違いかもしれないけど。 棲月: 隠蔽捜査7 作者:敏, 今野 新潮社 Amazon

64/横山秀夫

主人公の心情説明がくどい。殆どの人は、自分の行動の理由をそれほど詳細に認識できないのではないかな。それが文章で読み手に分かりやすく書かれるのは小説の良さだとは思うけど、四六時中そんな調子ではちょっと読みづらいと個人的には思う。 ラストは予想…

取引/真保裕一

主人公に一人称が、心の声では「私」だけど人と喋る時は「私」ではないので、何か裏があるのかと思ったけどそうでもなかった。そんなことってある? たった一人で残される(しかも病んでいる)子供のことを考えたら、人殺しなんて・・・。人を殺しておいて、そ…

終の盟約/楡周平

大変なことになった様子で始まったけど、割とめでたしめでたしな感じで終わるか。と思ったら、最後の最後に恐ろしいことに。 でもこの兄弟の仲の良さが羨ましい。お兄さんが会食のたびに高級店の会計を全額持ってくれることに引け目を感じないのは、自分の生…

去就/今野敏

届いたメールの内容を警察がそのまま鵜吞みにするなんてことがあるかな。読んでいて、メールの内容が正しいという前提で動いていたのですごく不思議に思った。まあこの小説は、事件の内容とか捜査の進め方ではなく、人間関係のゴタゴタを楽しむものなのでい…

自覚/今野敏

皆意外と竜崎の顔色を窺うようなことを考えているんだな。自分より上の人だからそれはそうかもしれないけど、警察はそういうことを特に気にする組織だからなのか。ただでさえ大変な仕事なのに、仕事以外のことでストレスがすごそうだ。 伊丹が竜崎の携帯に電…

囚人分析医/アン・ソールター

アメリカは州によってだったか?民間人でも銃の所持が許可されているけど、こんな風に撃てるものなのかな。でもいざという時に撃てなければ意味がないので、練習もどこかでさせてもらえるのだろうか。 囚人分析医 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:アン・ソー…

宰領/今野敏

子供が大学受験だからといって、家族がそんなに気にするものなのかね。家族はまだしも、職場の人まで気にするのはさすがにおかしいのでは。受けるのが東大だから? 今回は、あまり協力的でない人に囲まれて、私だったら胃が痛くなりそう、と思ったけど、そう…

「戦争」の心理学/ローレン・W・クリステンセン

いざという時にやるべきことをやるためには、反復練習が必要か。 私は火事が起こっても消防車を呼ぶことができないかもしれない。冷静な時でも、えーと何番だっけ?ああ119番かと思うくらいだし、普段電話をかけることが滅多にないので、その操作もパニック…

転迷/今野敏

サッと読めて、暇潰しに最適。 竜崎さん、しばらくは署長なんだろうけど、もっと色々な部署に行ってもらいたいなあ。 どうでもいいけど、麻取りの矢島は語呂が良い。 転迷―隠蔽捜査4―(新潮文庫) 作者:今野 敏 新潮社 Amazon

魔女の笑窪/大沢在昌

性別なんてものがなければよかったのに。面倒臭いだけじゃないか。子孫を残す必要があるなら雌雄同体でいいし、多様性が必要だということなら、性差ではなく個人差でいいはずでは。人間の体がそういう仕組みだったら、どんな世の中になってたかな。 魔女の笑…

無罪/スコット・トゥロー

「推定無罪」の続編だそうで。「推定無罪」は、小説は読んでいないと思うけど映画は見たかもしれない。でも昔のこと過ぎて全く覚えていない。 あらすじを調べてみると、主人公は昔も同じようなことやってるじゃないか。 元はと言えばアンナが割と悪いと思う…

初陣/今野敏

伊丹が竜崎のことを友達だと言う時、盛っているんだと思っていたけど、滅茶苦茶お友達だった。こんなに頻繁に電話をしていたとは。 インフルエンザにかかっても出勤してしまうのは、時代の違いなのか。感染を広げてしまうから出勤禁止なんて、確か昔は言われ…

疑心/今野敏

人のことが気になって仕事が手につかなくなるようなこと、私はあったかな。ないな。誰でもそうなり得るものなのかね。 奥さん本当によくできた人だなあ。羨ましい。 疑心―隠蔽捜査3―(新潮文庫) 作者:今野 敏 新潮社 Amazon

ある男/平野啓一郎

自分の身の回りの誰かが、実は違う人だったということが分かったとして、どう思うだろうかと考えてみたのだけど、私がその人のことを知る前のことについて聞いていたとしたら、その内容は事実と違っているかもしれないけど、それだけのことなので、あまり重…

FBI心理分析官2/ロバート・K・レスラー

前作は、このブログで探してみると2016年に読んでいた。 連続殺人とは、割と最近(百数十年ほど前)出現して以来増加傾向にある個人間暴力のひとつで、その原因には、メディアを通じた人間関係の相互の結びつきと、人の孤立化度合の増大が関連していると言われ…

アスク・ミー・ホワイ/古市憲寿

本の内容についての知識は、どこかの紹介文を読んだ程度の状態で、図書館で予約して受け取ったので、カバーを見てちょっとびっくりした。手に取りづらい。 この幸せはいつ壊れるんだろうと思いながら読んでいた。一緒に店を始めるなんて言い出した時はどうせ…

果断/今野敏

奥さんが夫の仕事の大変さをよく理解していて、いい夫婦なんだなと思った。家の中にこのくらい協力的な人がいなければ、激務をこなすのは大変だろうな。 何でもかんでも男女平等というのは、個人的には私も疑問を感じる。男女には違いがあり、得意なことが異…

キリコはお金持ちになりたいの/村松比呂美

相手がいくら嫌な奴でも、人を殺して得たお金でぜいたくな暮らしをして、楽しい気分ではいられないと思うけどな。世の中の大多数の人はきっとそうだと思うけど、そうでない人もいるということなんだろう。 この人は他人に嫌がらせをしてやろうというような悪…

迷宮探訪

未解決の殺人事件を、警視庁の元刑事がプロファイリングしたもの。 面白そうだと思って読み始めたけど、怖いと感じるとは予想外だった。ちょっと、途中で読むのをやめようかと思った。 普通の人は、人間の原型がなくなるまで殴るとか刺すとかいうことは恐ろ…

群青の夜の羽毛布/山本文緒

この本もずっと前に読んだはずだけど、全く内容を覚えていなかったなあ。 誰が悪いわけでも、どうすればよかったということもない。 毬谷家の人々は、想像していたよりも普通の人たちだと思ったが、鉄男が予想外にいかれていた。 毬谷家は家族なんてやめて、…

人生のサバイバル力/佐藤優

佐藤さんが久米島高校の生徒たちに抗議した内容をまとめた本とのこと。 色々書いてあるけど、個人的に印象に残ったことは二つ。 一つは、佐藤さんのお母さんが沖縄で経験した戦争の話。 入っていた壕の中にガス弾が投げられて、一緒に壕に入っていたガスマス…