A/森達也
森さんのドキュメンタリー映画「A」の撮影時の様子などについて書かれた本。
「A」はオウムに対し擁護も批判もしないつもりで作られた映画だったけど、世論はオウムを批判するのが当然で、批判していないなら擁護だと考える人がいて、特に日本国内ではあまり受け入れられなかった模様。
私は映画の方は見たことがない。特に内容に抵抗は感じないし、一般的な映画の構成などは踏襲しないで作られた映画とのことで、そういう意味ではどんな感じなのか興味はある。
だけど、この本の中で森さんは、オウムについて何か分かったかと言えば何も分からなかったと言っていた。じゃあ何が撮られているのだろう。
森さんは、自分のことよりも他人や世の中のことばかり考えている人のように見える。
それが森さんのやりたいことならば、自分のためということになるのかもしれないけど、赤字覚悟で何年もかけて映画を作るなんて、私にはとてもやれる気がしない。
この方の世の中に対する基本的な見方は、あとがきに書いてあった「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」なんだな。そう考えられる人がもっと増えたら、本当に世の中は豊かで優しくなるのかもしれない。