心はあなたのもとに/村上龍

 妻子持ちの投資家西崎と元風俗嬢の加奈子。加奈子は1型の糖尿病で、加奈子が亡くなるところから話が始まり、西崎は加奈子のメールを読み返しながら、加奈子との日々を追想する。

村上龍さんは有名な作家さんだけど、私はこの方の作品を今回初めて読んだ。

 

西崎と加奈子がお互いを大切に思っているのは本当だろうし、それは美しい話だ。でも西崎には妻子があり、そのことと加奈子の間で悩んだりはしないし、それどころか加奈子と付き合いながら頻繁に他の女性達と遊んでいる。

たまに罪悪感がどうのと言ってはいるけれど、人には大切なものが複数あって、どれか一つに付きっきりになることはできないと西崎は度々言っている。だからこの人の中ではそういうのはアリなんだろう。

そしてこの人、相手の言動から心理分析をして、どう相手に接したらいいかをものすごく考える。そりゃあ仕事はできるし、女にもモテますわ。

こう書くと西崎は悪い奴のようだが私は嫌な奴だと思ったわけではなく、ちょっと常人じゃないなと思った。こんなスーパーマンみたいな人そうそうお目にかかれないよ。

 

糖尿病の型の違いや症状など、ぼんやりとしか知らなかった。突然昏倒することがあるだなんて恐ろしい。加奈子は、誰もいない部屋で一人意識が薄れていったのだろうと考えると気の毒だ。

心はあなたのもとに

心はあなたのもとに