熊と踊れ/アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリ

この小説は、スウェーデンで実際に起こった事件が元になっているそうだ。タイトルの「熊と踊れ」は、主人公のレオが、自分より強い相手に勝つ方法を父親から教わった時に、父親が言っていた言葉だ。この父親は暴力的な人間で、ある時妻を半殺しにしてしまったため、家族はバラバラになってしまった。その辺りは昔の話として語られており、この小説の現在の時間軸では、その後成長したレオが、二人の弟と幼馴染とで武器庫から武器を盗み出し、銀行強盗をする。レオはとても頭の切れる奴で、冷静に綿密な計画を立て、うまくメンバーをまとめ、強盗を繰り返す。

この小説が実話を元にしていて詳細が語られているということは、レオはミスをして捕まったということだ。せっかくうまくやってきたのに、嫌っている父親に関することでは、レオは筋の通らない行動をしてしまう。

 

レオの父親であるイヴァンは、この小説に書かれている内容だけ見ると、悪人というよりは、性格に難ありで不器用な人だという印象を持った。(妻の実家に放火したり、妻を半殺しにしたりする人は、関係者からしたら十分に悪だろうけど、悪意による行動というよりは、考え方に問題があるいうか。そういう人が厄介なことに変わりはないのだけど。)

レオとその弟達はこの暴力的な父親のことを嫌っているけれど、彼らも父親と同等、あるいはそれ以上の暴力を用いて、自分達の都合を通そうとした。銃を向けられた人たちの中には、ショックで寝込んでしまうなど、その後の人生が滅茶苦茶になってしまう人も多いのだそうだ。