笹の舟で海をわたる/角田光代

 主人公の左織は現在60代で、幼い頃、戦争のため親元を離れて疎開した経験を持つ。そこでの出来事は、いじめがあったり、食べ物が満足に食べられなかったりと、つらい記憶として残っている。

20代の頃、左織には全く記憶がないが、疎開先で左織によくしてもらったという風美子に声をかけられる。やがて風美子は左織の義理の妹となり、お互い夫を亡くした現在でも付き合いがあるのだが、左織は風美子の思う通りに生かされてきたように感じて、内心恐ろしく思っている。

 

風美子は人を操作する能力に長けた人間で、実は左織が思っている通り、周りの人間をいいように操っているのではないかと、はらはらしながら読んだ。

実際、人を操るのが上手い人間はいるし、それが意図的でなかったとしても、他人を巻き込むタイプの人や、巻き込まれやすいタイプの人はいると思うので、上に書いたようなことがあったともなかったとも言えるのだろう。

 

幼い頃のほんの短い期間の出来事によって、大人になっても、そのずっと後の人生まで捕らわれ続けるというのは、つらいものだなと思う。

私は左織のような特別つらい出来事は経験していないので、そういうことはないけれど、それでももう少し若い頃は、子供の頃のいろんな出来事を引きずっていて嫌だったな。

笹の舟で海をわたる

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