無国籍の日本人/井戸まさえ

戸籍を持たずに暮らしている人がいる。戸籍は通常、子供が生まれた時に親が届け出をすることで登録されるものなのだけど、様々な理由でそれができない人がいる。その理由は、暴力や貧困が原因であったりする。そして戸籍を持たない子供は、学校に通うこともまともな仕事に就くこともできない。

著者の井戸さんは、制度の都合で、自身の子供が一時的に無戸籍になってしまった。その時の大変さを思い、戸籍がない人達が戸籍を取得できるよう支援している。

 

この本に登場した無戸籍の人達は、暴力や貧困のため驚くほど滅茶苦茶な人生を送っている。そして、戸籍を取得しようとしても簡単に取得できない。もちろん簡単に取得できては悪用されてしまうので、仕方がないのかもしれないけど、その人がその人であることを証明するために色々なことを尋ねられ疑われ、中にはそれが嫌になり、諦めてしまう人もいる。私には実感しづらいことなのだけど、戸籍がない人達は皆後ろめたいような気持ちで生きているそうなので、そうやって疑われるのは、普通の人よりもつらいことなのかもしれない。

この本に登場する人のうちの一人が、あと少しで戸籍を取得できそうだと思ったのに、学校に通っていないのにまともな文章が書けたりPCを扱えたりするのはおかしい、という理由で戸籍を取得できなかったと知った時、がっかりしてしまった。

無戸籍の日本人 (集英社文庫)

無戸籍の日本人 (集英社文庫)