老父よ、帰れ/久坂部羊

主人公の好太郎は40代の会社員で、認知症のため施設に入っていた父親を、自宅に引き取って介護を始める。

将来自分が同じような立場になったら、ということを時々考えるけど、好太郎は介護のためにしばらく仕事を休んでも給料の何割かは貰えるという割と恵まれた境遇だし、外部のサポートも色々受けられるようなので、この話だけ読むと、意外と何とかなるものなのかなという印象を受ける。

私は、共倒れになるほど大変なのではとか、外部のサポートを受け続けるにはものすごいお金がかかるのではと考えてしまうのだけど。

自身の家庭だけでなく、近隣の住民のことも考えなければいけないとは、ちょっと思いつかなかった。確かに、火事なんかになったら謝って済まないからなあ。

 

好太郎は、父親に自分の名前を呼んでほしいと思っていて、何度か呼ばせようとするけれど、呼ばれることはない。私だったらどうだろう。以前は私を認識していた人が私を認識しなくなったら、そういうふうに思うものなんだろうか。

老父よ、帰れ

老父よ、帰れ

  • 作者:久坂部羊
  • 発売日: 2019/08/07
  • メディア: 単行本