精神分析入門(上)/フロイト

 心理学に関連する本は読んだことがあっても、教科書に出てくるような有名な人が書いた本は読んだことがなかったので、どんなものかと思って読んでみた。

フロイトさんがどこかで抗議した内容らしい。

 

こちらが、「何だか腑に落ちないなあ」と思うことを、あなたはきっとこう思うでしょう、と言語化してくれて、それはこういうことなんです、と答えてくれる。

言っていること全てを正しいと思うわけではないけど、気持ちが良い。

こんな風に話せたらと思う。

 

夢は願望を現す

夢は願望を現すということは、聞いたことはあったけれど、本当の意味は分かっていなかった。

眠りを維持するために、眠りから覚めてやりたいと思うこと(願望)=眠りを妨げることを満たすための夢を見る、ということらしい。

この辺りを読んだ頃、ちょうどうまく眠れない日が続いていて、何だろうなあと思っていた。

気になることがあるから眠れないんだろうと思ってはいたのだけど、それが何なのかは分からなかった。

でも、この「夢は願望を現す」ということの本当の意味を知って、ああ、私は何かやりたいことがあったんだなと改めて思ったら、不思議なことにスッと眠れるようになって、その後何となく、何がしたかったのかも分かってきた。

 

意識されれば治る

(神経症の)症状形成は、表面には出ないでいるある別のものの代理なのです。ある種の心的過程は、正常な場合には意識がついにはその存在を知るに至るほど広範囲に発展すべきはずだったのです。ところがそうはならなかったのです。その代り、中断され、なんだかの意味で妨害され、無意識の状態にとどまらざるをえなかった過程から、症状が生じたのです。つまりなにか交換のようなことが起ったわけです。この交換をもとに戻すことに成功すれば、神経症の症状の治療はその使命を果したということになります。

昔ある専門家の方に、心理的な問題というのは、原因が分かれば治るのですかと質問したことがある。

その方の答えは、「治るとは限らない」だった。*1

それじゃあどうすりゃいいのとがっかりしたのだけど、フロイトさんは治ると言っているので少し安心した。

病気というほどの何かがあるわけではないのだけど、望んでいないにもかかわらず、どうしてこういうことをしてしまうんだろうと思うようなことは、多かれ少なかれ誰にでもあることだと思うので。

と言っても、無意識にとどまっていることを意識に引っ張り出すのが難しいのだけど。

 

精神分析入門〈上・下〉 (1977年) (新潮文庫)

精神分析入門〈上・下〉 (1977年) (新潮文庫)

 

 

*1:神経症に限った話をしていたわけではないので、ちょっとお門違いかもしれないけど。

本の種類、読む目的、読み方

今まで本を読むと言えば、殆ど小説しか読んだことがなかったのだけど、最近は小説以外で、気になった本はなるべく色々読んでみている。
でも、読み進めていくと段々と嫌になってきてしまって、面白そうだと思って読み始めたはずなのにどうしてだろうなあと思っていた。
その理由が分かってきた気がする。多分、ストーリーのある文章を読むのと、説明文のような文章を読むのでは、読み方を変えたほうがいい。
よく、本は最初から最後まで全部読むのではなく必要な部分だけ読めばいいと聞くけれど、私はそんなことをしたら細かいところを見落としてしまって面白くないのではと思っていた。小説ばかり読んでいたのでそう思っていたけれど、きっとあれは小説を読むときの話ではないのだと思う。
そもそも小説とそれ以外の本は読む目的が違う。
小説は心に潤いを与えるために読む。読むこと自体が楽しい。書かれている情報に興味を持って読む本は、知識欲を満たすために読む。文章が面白いわけではないし、ストーリーがあるわけではないので、続きが気になるという楽しみもあまりない。それに書いてあることの全てに興味を持てるとは限らない。だから、欲しい情報だけピックアップして読めば良いということなんだな。
本を買う時に、内容を拾い読みして面白そうだと思ったのだから、家に持ち帰ってから読むときも、同じような読み方をすればいいわけだ。
それから、説明文のような文章は特に、同じものを続けて読むと飽きてくるみたい。嫌になってくるのはただ少し飽きただけで、複数の本を並行して読めば、続きをまた興味を持って読めることに気付いた。
一冊を読み終わるまでに内容を忘れてしまいそうなのは難点だけど、ちょっとこのやり方で読んでみよう。

ラスト・エンペラー/エドワード・ベア

何が起こったかではなく、溥儀が何を考えたかを知りたいと思って読み始めたのだけど、この本にはそういうことはあまり書かれていなかった。

半分くらいまでは読んだけど、中断。

 

何をしても誰にも咎められないけど自由がない。あんな滅茶苦茶な育ち方をしたのに、性格が歪んでいる様子もなく、何もできないような人でもなく・・・何故だろう。

ある程度の年齢になってからは、きちんとした人と接することができたから良かったのか。それとも生まれ持ったものなのか。

 

ラスト・エンペラー (ハヤカワ文庫NF)

ラスト・エンペラー (ハヤカワ文庫NF)

 

 

アンダーグラウンド/村上春樹

最近読んだ本の中でこの本が言及されていて、気になったので読んでみた。

村上春樹さんが、地下鉄サリン事件の被害にあった方や事件に関わった方たちに聞いたことをまとめた本。

事件のことだけでなく、生い立ちやどんな仕事をしているかなども書かれている。

村上さんの小説はいくつか読んだことがあるけれど、そういえばこの方の小説以外の文章を読んだことがない。

考えてみると、作家さんの書いた作品を読むことはあっても、その人がどんな人でどんな考え方をする人なのか、知る機会って無いものだな。

村上さんが、地下鉄サリン事件に関わった人達にインタビューをする際、インタビュイーの印象を「自分はこういう人だと思った」と書いているのを見て、こんな風に人を観察する人なんだな、と新鮮な感じがした。

 

サリン散布の実行犯は、サリンを撒きたくなかった

サリンは複数個所に撒かれたので、それを実行した人は複数いるのだけど、その全員が、サリンを撒くことをとても酷いことだと認識して、やりたくないと思っていた、ということが書かれていて、少し意外に思った。

信じるもののために、正しいと思ってやったわけではなかったんだな。

オウムの信者となった人達が、どういう経緯でオウムと関わり、どんな考えを持った人たちなのか、機会があれば知りたい。

 

日本でテロが起こるなんて誰も思わなかった

サリンによって何人かの人が倒れたり症状を訴え始めた時、周辺にいた人達は、その辺り一帯で問題が起こっているとは思っていない。

自分の体調が少しおかしくなってきても、それらが関係のあることだとはほぼ誰も思っていない。

この頃の日本では、自分の生活圏内でガスや細菌が撒かれるなんて、誰も思いもしなかったということなんだろうなあ。

 

乗客の命を守るのは駅員の仕事?

駅員さんが皆、自身にサリンの症状が出始めても、体調を崩した電車の乗客を放っておけないと介抱していたのだけど、乗客の安全を守るのも駅員さんの仕事に含まれているのだろうか?

仕事でもないのに人助けをしたらおかしいということではなく、皆が皆、自分もサリンの症状が出て苦しいのにそれでも、という感じだったようなので。そこまで体張らないといけない仕事だっけ?と思った。

そこにいたら自分も危ないということが分からなかったという理由もあるのだろうけど。

それにしても、医療関係の仕事についているとか、普段から人の命を預かっている方はこんな時にも率先して人を助ける行動ができるだろうけど、駅員さんが皆そういう行動をされたようだったので少し驚いた。

私が知らないだけで、駅員さんは皆乗客の命を預かっているという意識を持って日々の仕事をしているのかもしれない。

 

 事件はその後どうなったか

逃亡犯を除く全ての判決が確定しており、首謀者である麻原彰晃を含む13名の死刑が確定しているものの、執行はされていないとのこと。

死刑が執行されない理由の一つに、麻原が精神を病んでいるから、ということがあるらしい。

精神を病んでは反省することもできず、きっと回復もせずこのまま朽ち果てていくんだろうなあ。厄介な人だ。

 

アンダ-グラウンド

アンダ-グラウンド

 

 

EQ こころの知能指数/ダニエル・ゴールマン

精神分析とかではなく、脳の仕組みの方から考える心理学の本かな、

と思ったのだけど、本屋では自己啓発のところに置いてあった。

これを自己啓発とするなら、読む人の目的によっては割と何でも自己啓発に分類されそうな気がするけどなあ。

 

些細なことで突然感情が爆発してしまって、(単に積もり積もったものがある時爆発しただけ、という気もするけど)なぜそうなったのか理由がいまいちわからないし、自分の中にそんなに激しい感情があったことに驚いたことがあった。
どういうことだろうと気になっていたところ、この本で「情動のハイジャック」という言葉を見つけて、ああ、まさに乗っ取られた感じだった、と思ったのがこの本を読んでみたきっかけ。

そんなわけで読むのを割と楽しみにしていたのだけど、実際読んでみると、正直読みづらかった。

いざ読んでみると興味を持てる内容がそれほどなかったからなのか、物語ではなく説明的な文章だから読みにくいのか。

 

情動のハイジャック

それはそうと、ハイジャックは扁桃核の働きによるものらしい。
入ってきた情報に対して反応を起こすまでの流れは2種類あって、一つは思考を司る大脳新皮質を通るルート。通常はこちらのルートを通る。
もう一つは、情動と深い関わりを持つ扁桃核を通るルート。前者が何層もの神経回路を通るのに対し、後者は直通なので速い。非常事態に直面した場合は、この直通ルートが働いて、理性的な判断をする前に衝動的に行動してしまう。
それから、「非常事態」の判断のもととなる情動の記憶の多くは、その意味を表現する言葉を持たない幼少期に形成されるので、爆発の原因を後から理解するのは難しいらしい。
これはコントロールできないわけだ・・・。

 

他に印象に残っていること2つ。

 
共感の欠如

卑劣な犯罪を起こす人の多くは、他人に共感する能力が低いらしい。
人や生き物が傷つくようなことを、好奇心としてはしてみたいなあと想像することはあっても、実際にやろうという気にならないのは、相手の苦しみを想像するからだものなあ。

 

嫌なことを何度も繰り返し思い出すこと

ショックな出来事があった時、子供はその出来事を遊びなどで疑似的に再現することがあるということについて。
これは安全な状態や、実際の出来事よりも程度の軽いものとして思い出したり考えたりすることで、辛いものを辛くないものとして再学習するということらしい。
私はPTSDになるような重い経験はないけれど、もっと小さなことで、嫌なことを何度も繰り返し思い出してしまって嫌だなあと思うことがある。でもそうすることによって、よくよく考えたら大したことがなかったと思えることもあるし、次に同じようなことがあったらどうすればいいとか考えることができるから、嫌だと思っても考えてしまうんだよなあ。

 

他にも何か思うことがあったかもしれないけど、他の本と並行して読んでいたこともあって、忘れてしまった。
今度から本を読むときは、メモを取りながら読もう。

 

EQ~こころの知能指数

EQ~こころの知能指数