トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか

 2009年の7月、北海道のトムラウシ山を登るツアーが行われたが、ガイドを含む18名中8名がなくなった。原因は低体温症だったそうだ。

自分が山に登る予定はないし、身の回りで山に登る人はいないけれど、何となく興味を持ったので読んでみた。

 

人間の深部体温*1は36度に保たれているが、それが35度以下になると低体温症となる。

低体温症になると、体が思うように動かなくなったり、意識がもうろうとしてきたりする。そして何もしなければ大体15分おきに1度ずつ体温が下がり続け、2時間程度で死に至る。

 

トムラウシのツアーでは、途中で台風に近い状態の風雨に見舞われたことが低体温症を招いた直接の原因だけれど、3人いたガイドは誰もトムラウシ山に上ったことがなかったこと、低体温症の知識も殆どなかったこと、ガイド同士の連携が取れていなかったこと、またそれらによって、天気が悪くなることが予想されていたにもかかわらず計画を強行してしまったことなどが根本的な原因として挙げられている。

 

だけど、後に生き残った人に対して行われたインタビューではあまりガイドの問題を責める人はなく、その後も同じツアー会社のツアーを利用しているという人もいて少し驚いた。

自分の命は自分で守るしかないということか。

 

それから、ツアーの参加者が皆高齢な方ばかりなのも驚いた。私はとてもじゃないが、山小屋に何泊もしながら山を歩くツアーに参加できる気がしないのだけど。

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか

 

 

*1:わきの下などで測る体温のことではなく、体の中心部または脳に近い所で測った体温のこと

放蕩記/村山由佳

 村山さんの半自伝だそうで。主人公の夏帆が村山さんということだね。

 

夏帆は母親と気が合わず子供の頃に苦しんだが、大人になった今でもうまく付き合えない。そんな母親の痴呆が始まって・・・というお話。

正直、母親がものすごく酷いとまでは思わなかったのだけど、こうして他人事のように本で読むのと実際に相対した子供の立場とでは、感じ方が違うのだろう。

それよりも家族関係が特殊で驚いた。複雑な家だなあ。

夏帆の行動は私の人生では考えられないようなことがいくつかあって、色々と特殊な経験をしていないと小説なんて書けないものなのかなと思った。

 

この本、読むかやめるか結構迷った。気が滅入るような話だと嫌だなと思ったので。読んでみたらどちらかというと温かい気持ちになる話だった。これが村山さんの力ということかもしれない。

放蕩記

放蕩記

 

 

日本人の値段/谷崎光

 日本のもの作りが落ちぶれつつあるような話はよく聞くし、電気屋さんなどに行くと確かにそう感じる。

中国や韓国のものも日本の技術者の流出で少しずつ良くなってはいるのかもしれない。

でも日本から中国に出ていった技術者の方々曰く、一部の技術だけ入手してもきちんとしたものが作れるようになるわけではなく、材料なんかも日本と比べると全然駄目なんだそうな。

それだったら、日本のいいところを伸ばしていけたらいいのにと思うけど、できる技術者の方々は、段々と管理などに回されて物を作る仕事をやらせてもらえなくなり、面白くないから中国に行ってしまうのだと。

どこでも同じなんだなあ。

 

日本人の値段: 中国に買われたエリート技術者たち

日本人の値段: 中国に買われたエリート技術者たち

 

 

桶川ストーカー殺人事件ー遺言/清水潔

 「殺人犯はそこにいる」が面白かったので、同じく清水さんが書かれたこちらも読んでみた。面白かった。記者さんだけあって、文章が上手いということもこの本の面白さの重要な要素になっていると思う。

 

小松和人はただの悪い奴ではなくて、ちょっと精神を病んでいるか何かの障害を抱えていたのかもしれないと思った。清水さんと直接話をしてほしかったなあ。

桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)

桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)

 

 

殺人犯はそこにいる/清水潔

 ジャーナリストでありこの本の著者である清水さんは、「日本を動かす」テレビ番組を作るため、過去の未解決事件を調査するうちに、無関係と思われていた4件の幼女誘拐事件が同一犯による犯行の可能性に気付く。またそのうち1件の犯人とされ、刑務所で服役中の菅家さんは冤罪であることも。

清水さんの働きにより、菅家さんは17年の刑務所生活を抜け出すことができた。そして真犯人は・・・。

 

何もしていないのに犯人だと言われて、無実を訴えても全く聞いてもらえなかったらどうしたらいいのか。何時間も休ませてもらえず怒鳴られ続けたら、耐えられないかもしれない。それに耐えても耐えなくても、結論ありきなのだから成す術がない。と考えていたら恐ろしいし腹が立った。

菅家さんのご両親は、菅家さんが刑務所に入っている間に亡くなってしまったそうだ。後から謝ってもらっても取り返しがつかない。

日本の警察や検察が正しく機能しないことがあるという話は時々聞く。人間のやることだから仕方がないことだとは思うけど、自分が同じような目にあわないようにするためにはどうしたらいいか。とにかく事件に関わらないよう、危うい物には近づかないようにするしかない。けどそれも限界がある。菅家さんだって疑われるようなことは何もしていないのに。

 

真犯人については、このままうまく行ったらいいのにと思ったけれど、そうはいかないか。残念。

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

 

 

ぼくは猟師になった/千松信也

 猟師と聞くと、世間から離れて一年中山の中で暮らすとか、マタギのような生活をイメージするけれど、著者の千松さんは普通の家に暮らし、普段は仕事もするなど現代的な生活をしつつ、猟の期間中だけ山に入って獲物を捕るそうだ。

ちなみに千松さんは銃ではなく罠専門で、山の中にいるシカやイノシシを獲るのだそうだ。罠を使う猟では他に、鴨やスズメなどの鳥を獲る人もいるらしい。

そうか、休日に釣りをするのと一緒か。趣味と考えると楽しそうだ。獲れた獲物はおいしいらしいし。

ぼくは猟師になった

ぼくは猟師になった

 

 

使える武術/長野峻也

何かあった時のために武術について知っておきたいと思っていたので、読んでみた。と言っても、そういう何かにあうことが一生のうちに一度あるかないかだろうけど。そう、何か武術を習ってみようかと思うこともあるけど、役立つ機会はないかもしれず、お金と時間をかけてやってみるかというとなかなかやれない。気軽に通えるところもそれほどないようだし。

だからせめて、危ない目にあった場合のことを想像しておくのは大事だと思って、ここでやばい奴が現れたらどうするかと想像してみたり、犯罪に関する話を本などで読んでみたりはする。そしてこの本にも書かれていたように、いざやるときは手加減なしでやるつもりではいる。まあ、いざという場面に直面したことがないので、本当に思う通りにできるかというと、その保証はないのだけど。

使える武術 (ちくま新書)

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