亡者たちの切り札/藤田宜永

似ていない親子もいることはいるだろうけど、遺伝するのだから、大抵の親子は見た目が似ているものだと思う。横に並んでみた時に、誰が親子かって、そんなに分からないものかな。

と思ったけど、私も父や母と似ていると他人からは言われたことがあるけど、自分でそう思ったことはないや。

 

自分の子がすぐそばにいても、それを明かすことができないってどういう気持ちだろうか。

子の側としては、独立して何年も経ってから自分の本当の親が誰だか分かっても、びっくりはするけど、それだけかもしれない。

でも親の側はきっとそうじゃないんだろう。悪いことなんてしなければよかったのに。

 

二重生活/小池真理子

偶々目についた誰かを尾行してみる。ちょっと面白そうだけど、大抵は何も面白いものは見られないんだろうと思う。何か面白いものが見られたとしたら、それは相手が見られたくないものかもしれないし、何にせよやられる方は気持ちの良いものではない。気付かれた場合、相手によっては危ない目に合うかもしれないし、トラブルになるかもしれない。

この話では色々丸く収まったけど、面白半分でやることではないと思うなあ。

 

縄紋/真梨幸子

文章を書くだけでなく校正をする人がいて、他にも多分沢山の人が関わっていて、1冊の本を世の中に出すのは大変なことだな。

それにしても、この本の中に出てくる縄紋の話は「眠っている時に見た夢の中の話」のようなものだと思うのだけど(最初からそうだったと思うのだけど)、そういうものに対してまで事実と合っているかどうか検証しようとするのはおかしくないかと思った。

 

インドクリスタル/篠田節子

国による文化的な違いは色々あるけど、インドの文化は特に理解しづらいものが多い気がする。この話のように、会社とか契約という概念を理解していない人達との交渉なんてものすごく大変そう。何よりこんなに頻繁に命の危険にさらされるのではとてもやっていられない。

 

ロサは、頭が良くて、目的のためなら手段を選ばず、カリスマ性があって、いわゆるサイコパスということかな。育ちが育ちなのでおかしくなってしまったのか、元々持っていた素質なのか。自分の身の回りにこういう人はいないけど、いたらお近づきになりたくないなあ。

 

老猿/藤田宜永

適度な距離感を保ちながら付き合える興味深い人物がいる暮らし。いいな。

老猿と一旦別れた後、また会えてよかった。それに、どうせどこまでも追ってくるのだから、あのタイミングでよかった。

 

幻痛は鏡の中を交錯する希望/長沢樹

誰が誰だか分からなくなる。名前が読めないと特に。

才能があるからといって、やりたくない仕事を無理やりやらされるのは嫌だな。もうちょっと楽にやれる仕事ならいいけど、全然楽じゃないし。

 

幻肢/島田荘司

周りの人が皆、雅人がどうなったのか知らないと言うのでおかしいなと思っていて、嫌な終わり方をするのかなと思ったけど、そうでもなかった。よかった。

これだけ大きな事故にあって相当な重症なのに、実家に連絡が行かないのもおかしいと思ったけど、これは話の筋とは関係がなかったな。

 

遥が雅人に対して激昂する様子、怖い。何かの本で、情動のハイジャックとか呼ばれていたかな。私も以前似たような経験をしたことがあって、その時は自分で自分に驚いたけど、コントロールできないんだよねえ。私は怒鳴っただけで済んだけど。

普段から「そういう人」というわけではなくて、誰にでも起こり得るんだと思う。