FBI心理分析官/ロバート・K・レスラー&トム・シャットマン
プロファイリングとは、過去の事件や実際に関わった事件の分析から得られた、経験の積み重ねによるものであるとのこと。
この本には、FBIの心理分析官となったロバート・K・レスラー氏が実際に関わった事件の様子や、異常殺人者たちとの面接により聞き出した犯行の手口、犯行前後の心理状態、彼ら生い立ちなどが書かれている。
異常殺人者達は、不幸な家庭で育っているということ
それでも、思春期頃に家庭の外で手を差し伸べてくれる人が現れれば救われるのだけど、それもなく、他人を思いやることを教えられないまままま大人になると、暴力的な妄想を現実にすることに歯止めをかけるものがないため、残酷な殺人を犯してしまうとのこと。
捕まって死刑になることが分かっていても止められるものではない。
病院に入っても刑務所に入っても、更生することはないというのが一部の専門家たちの見解らしい。
人はいくつになっても変われるという考え方もあるけれど、「どんな風にでも」というわけにはいかないのかもしれない。
後から正すのが無理なら、そのような不幸が起らないよう防ぐしかないのだろうけど・・・。
異常殺人を犯すのは、ほぼ20~30代の白人の男性であるらしい
20~30代というのは、思春期から積み重ねてきた妄想が爆発しだす頃だとか、知力、体力的に十分な年代だとかで、納得できる感じがする。
男性という点も、一般的に女性より男性の方が、力があり闘争心が強いものだと思うので、まあわかる。
けれど白人にほぼ限られるという話を聞いたのはこの本が初めてだ。
遺伝的な理由もあるということなのかなあ。
異常と言うけれど
例えば殺してから**したとか、この本にも書いてあるように、全く理解できないことではないんだよなあ。
異常殺人を犯した人達だって、人なのだから。
私達だって、似たような想像くらいはする。
違いは、それをどのくらい頻繁に、どのくらい現実的なこととして想像するか、実現したいと思うか、ということくらいではないかな。
実際にやるかやらないかの差は大きいのだろうけど、その差を決めるのは、歯止めをかけるものの有無だけかもしれない。
酷い犯罪を犯した人は死刑にすべきか、という話
異常殺人者達の分析が新たな殺人を防ぐのにとても有益だということと、だから彼らを殺さずに檻に閉じ込めておいた方が良いということは、理屈としては分かる。
その通りだろうなあとは思う。
でも自分の身近な人が被害にあったらそんなことは言っていられないだろうとも思う。
人間には感情があるのだから仕方がない。
死刑なんて不毛だと思っても、いざという時には目には目を、の方がしっくりきてしまうもの。
- 作者: ロバート・K.レスラー,トムシャットマン,Robert K. Ressler,Tom Shachtman,相原真理子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1994/04
- メディア: 単行本
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よその子/トリイ・ヘイデン
トリイ・ヘイデンさんと、4人の色々な問題を抱えた子供たちのお話。
この頃のトリイさんは教師?
子供たちの問題は様々で、幼い頃に過酷な経験をした子、脳に障害がある子、原因が全く分からないけれど奇行を繰り返す子など。
トリイさんはいつもどうしたらいいか分からないと言っている。
こんなに大変な子供たちを預かっておいて、そんなに無策なのかと思うけど、実際作戦なんて立てようがないんだろうとも思う。
効果があるだろうと思えることをやってみて、それに対する結果が出ることは多くはない。
やったこととは関係なく、何だかわからないけど良くなったということの方が多いかもしれない。
そんな暖簾に腕押し、糠に釘みたいな毎日では心がくじけそうだけど、この方はそういう子供たちに魅せられて、この仕事を生きがいのように感じている。
日本語の副題に「見放された子どもたちの物語」と書かれているけど、この本の内容に合っていないと思う。
確かに見放された子もいるけれど、問題のおかげでさぞかし生活は大変だろうと思うのに(問題の内容によっては、どうやって一緒に暮らすのか私には想像がつかないような子もいる)、子を愛している親もいる。生みの親でなくても。
この本の冒頭に書かれていた、「生涯、窓のない壁に囲まれた世界の中に見失ってしまった」とは誰のことを指しているのだろう。
冒頭で呼ばれている名前と本文に登場する子供たちの名前は異なっているし、この本の終わりでは全員が一応いい感じでやっている様子までしか書かれていないので、全く分からない。
- 作者: トリイ・L.ヘイデン,Torey L. Hayden,入江真佐子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1997/05
- メディア: 単行本
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兵士を見よ/杉山隆男
航空自衛隊で働く人達の話。
主にF15という戦闘機に乗る人達と、事故や遭難が起った時にその救出にあたるメディックという仕事をする人達について書かれている。
戦闘機乗り
訓練中に事故で亡くなる方が、それなりの数いるとのこと。
けれど戦闘機に乗る人達は嫌々乗っているのではなく、乗る理由のほぼ全ては、戦闘機が好きだから、ということらしい。
大変だろうと想像はするけど、何となくかっこいいからこの職業を目指したと。そんなもんだよね。
戦闘機に乗るのは体にものすごく負荷がかかるので、頑丈なヘルメットとスーツに、酸素マスクまでつけなければならない。
パイロットは、他の職業に就いている人よりも顔にしわが多くできてしまうし、腰の調子を悪くする人も多いらしい。
9Gとはどのくらいか想像がつかないけれど、きっとジェットコースターのもっとすごいやつに乗った感じなんだろう。
多分乗せてもらったら、もう、早く終わってと思うんだろう。
一機何百万もするし、入念なメンテナンスが必要だし、乗りこなすのも大変だし。それでも、戦闘機を持たなければならないのか。ならなということなんでしょうね。
メディック
こちらは日本でも活躍する場があるので、戦闘機乗りよりはどんなものか想像がしやすい。
一仕事終える度にものすごく達成感はありそうだけど、その一仕事が毎度毎度大変すぎる。
それにしても、引き受けてくれる人がいるから私達は安心していられるけど、こんな職業の人の家族は、常に安心できないだろうなあ。
私の地球遍歴/石弘之
元新聞社のジャーナリストであり、その後環境に関わる様々な機関に勤めた著者が、世界各地で見てきた環境破壊の問題について書いた本。
私が覚えている限りでは、最初に環境問題について知って衝撃を受けたのは、小学校か中学校の図書館に置いてあった本で、酸性雨により何かの像が溶けていたり、森林がぼろぼろになっている写真を見た時だった。
あの頃は割と酸性雨が危ないとか何とか周りでも聞いたような気がするけど、そういえば最近は聞かなくなった気がする。
他にもオゾン層とか温暖化とか環境ホルモンとか、色々話題になっていた?ような気がするけれど最近はあまり聞かない。
けど、問題が解決したわけではなく、当時は問題が浸透し始めた頃だったから騒がれたとか、今は今で他に新たな問題があるというだけなんだろうなあ。
環境破壊の問題について、個人的には一応気にしていて、なるべく水や電気を無駄にしないように、ごみを出さないように気を付けてはいるけど、実際それでは大した効果はないんだろうと思う。
問題の規模が大きすぎるし、多くの環境破壊の根本的な原因はそういうことではないようなので。
世の中には問題が沢山あって、どれもこれも簡単には何ともならないんだよねえ。
選択の科学/シーナ・アイエンガー
この本には、その人が属している文化や、情報の提示のされ方などが選択に与える影響や、どのような条件で選択を行うと満足度が高いかなど、著者が研究してきた内容について書かれている。
毎回は難しいだろうけど、どういうものが判断を歪めることがあるか知っていれば、重要な選択をするときには色々な角度からよく考えて、自分が望まない考えに引っ張られていることに気付けるかもしれない。
それから、何でも自分で選べた方がいいんじゃないかと思っていたけど、そうでない場合もあるということについて。残酷な選択をしなければならない場合とか。
そういう時は人に任せたほうが、ダメージが少なく済んで良いかもしれない、ということも覚えておこう。
- 作者: シーナ・アイエンガー,櫻井 祐子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/11/12
- メディア: 単行本
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檻のなかの子/トリイ・ヘイデン
この本の著者であるトリイ・ヘイデンさんは、心理的・器質的に問題のある子供たちの手助けをしている人である。
(以前は教職に就いていたようだけど、この本の頃には、カウンセラーとかセラピストのような仕事をしている模様。職種が何なのかはよく分からない。)
この本には、トリイさんと、彼女が面倒を見ることになった、8年間誰とも口をきかなかった少年との出来事について書かれている。
このシリーズは他にもいくつか読んだことがあるのだけど、何故かいつものめり込んでしまう。
トリイさんは、こんな大変な仕事をしているのにそこら辺にいそうな感じの人で、私から見るとすごくどうでもいいことでうだうだ言っているようなこともある。
けれど、仕事に関する悩みや問題への向き合い方は共感するところがあるし、彼女が相手をする人達が、良くなったり悪くなったりするのを読んで嬉しくなったりがっかりしたりする。
そういうところがこのシリーズの魅力なんだろうと思う。
このシリーズに登場する人達は、世の中で色々な問題を抱えている人達のほんの一部だし、そのほんの一部の彼らも、救われるとは限らない。
この本の最後も一応はハッピーエンドだけれど、彼がその後の人生もうまくやって行けたかどうかは分からない。
言ってしまえば焼け石に水のように思ってしまう。
トリイさんもそれが分かっているし何度も絶望するけれど、それでも何度も立ち向かう。
きっと使命感とか正義感ではなく、本人も言っているけれどこの仕事に魅せられているということなんだろうと思う。
大変さとやりがいを天秤にかけてやりがいを選んでしまう気持ちも、分からなくはないよ。
檻のなかの子―憎悪にとらわれた少年の物語 (トリイ・ヘイデン文庫)
- 作者: トリイヘイデン,Torey Hayden,入江真佐子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/01
- メディア: 文庫
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国家の罠/佐藤優
鈴木宗男事件の当時、外務省に勤めていた佐藤優氏が、外務省の金を不正に使用したことや、北方領土へのディーゼル発電事業で自身の利益になるよう、特定の業者が工事を受注できるようにしたなどの疑いで、逮捕された時の話。
検察側は事件としてストーリーを作りたいので、ある程度罪を認めて折り合いを付ければそこそこで解放されるのだけど、この方が価値を置いたのは国益やこれまでやってきたことに対する筋を通すことだったので、無罪を主張し続けた。
情報のプロである佐藤氏と、取り調べを担当した西村検事とのやりとりが見どころ。
佐藤氏は冷静に状況を観察・分析して、自身の守るべきものを守るための出方を探る。
西村検事は、検事としての責務をきちんとこなしながらも、佐藤氏の意志を尊重している。
お互いの立場上相容れない部分がありながら、段々と戦友みたいになっていくのが面白い。
それよりなによりこの二人、会話が始まると大体イチャイチャし出しすのでニヤニヤしながら読んだ。
本の裏表紙などに情報のプロと書いてあったので上でそう書いたけど、佐藤氏は、相手がどういう人間であるかを理解すること、そしてそれをもとに相手にどうアプローチするかということにかけて、プロなんだなあ。
国も人種も違う人達を相手にするには、こういう能力が必要なんだろうな。
(外交に携わる人、誰もが同じようにできるのか分からないけど。)
そして昼も夜もない激務なので、能力的にも体力的にも、とても自分には務まらない仕事だ。
佐藤氏が、刑務所に入ってゆっくりできて良かったと言うのも納得できる。
あと、刑務所のご飯は美味しそうである。
特にお正月のご飯、私そんなに食べられない。どうしよう。
とても面白かったので、この方の他の本も読んでみたい。