私の男/桜庭一樹
何年か前に読んでいたら投げ出していたかもしれない。今はアリだなと思う。父親に対する感情を自分に当てはめて共感することはできないけど。
誰が悪いと言ったら父親が悪いんだろうなあ。最初に手を出した時の年齢がさすがにちょっと・・・。どうしてそういうことをしてしまったのか。病気みたいなものか。
親切(なつもり)のおじさん(おじいさん?)を流氷に置き去りにするシーンが狂気を感じる。相手が死ぬことまで想像できていなくて勢いでやってしまったのではない。こんな若い子が。
結局淳悟はどうなったとか、どうして美朗と結婚することにしたとか知りたかったのだけど、ひたすら過去に戻るだけなのね。
狙撃手のオリンピック/遠藤武文
ダーク/桐野 夏生
シリーズものだと知らずに読んだ。何とこの作品がシリーズの5作目で、しかも完結編らしい。登場人物の人間関係を知っていることで印象が変わると思うので、順番に読みたかったなあ。
登場人皆、性格が激しすぎる。もうちょっと穏やかに生きられないものか。
特に主人公が育ての父親を見殺しにするシーンが地獄絵図だった。この二人の人間関係がどんなものだったのか詳しくは分からないけど、それほど悪くはなかったようなのに、好きな男の遺書を捨てられたからといってあんなことするか。
しかし男の方も自分の娘と同じ年齢の愛人にパパリンと呼ばせるあたり大分まともじゃないので、まあどうなのだろうという気もする。この辺りは友部が言っていた説が気になる。過去の話を読んだら何か分かるだろうか。
皆激しいけど、この話で最も輝いていたのは主人公ではなく久恵だと思う。盲目でレイプされるなんてとんでもなく恐ろしいことだと思うけど、こんなものは大したことがないと言い、更にはその相手を手玉に取るとは。どう生きてきたらこんなに強くなるんだよ。
嘘/村山由佳
この方の本は、何と言ったらいいのか、展開が少女漫画っぽいのかなあ、とにかくすごくドキドキする。
途中は、うあー酷い、と思いつつそれはそれで楽しく読んだけど、最後の最後にまた酷い目にあうんじゃないかと思って冷や冷やした。
正木君は何事もなければ普通にいい奴だったのだろうけど、不幸な事件があったばかりに嫌な面が強調されてしまって、気の毒な役回りだなと思った。
病巣/江上剛
数年前に発覚した、東芝の不正会計をモチーフにした小説。
経営陣から無理強いされ、間違いだと分かっていることをやらされる社員達の様子を見ていると悲しくなる。その会社の一員であることを誇りに思っている人ほど、深く絶望する。
私も似たような思いをしたことがあり(ここまで大きな出来事ではないけど)、会社に失望したので辞めたけど、この話に登場する社員達は、そういうことがあってもまだ会社を見限らない。そのうちの一人は耐えられなくなり自殺してしまう。死んでも、奥さんや子供は困るし悲しむだけで、何もいいことがない。転職なんてどうにかなるし、たかが会社じゃないか。死ぬことなんて何もないと思うのに、思い詰めた人はそんな風に思えないんだよなあ。
ストーカーとの七〇〇日戦争/内澤旬子
著者の内澤さんは、付き合っていた相手と気が合わないと感じ、別れを突き付けたところ、相手の男性が突然様々な嫌がらせをしてくるようになった。そのために、隠れるように住む場所を変えなければならなかったり、警察や弁護士に相談したり・・・。
ストーカーとまでは行かないけど私も、親しくしていた人が突然攻撃をしてくるようになったことがある。仕事関係の人で、必要以上に近付いてきたので突き放したら、そうなった。後になって、相手から見ると私の方が手のひらを返したように見えたんだろうなとは思ったけど、当時は怖かった。切れると何をするか分からないような所もあったので、力では絶対に叶わない相手に突然暴力を振るわれて、治らない怪我でも負ったらと思うと。その人には、二度と私の視界に入らないでほしいと思う。
似たような経験をしたことがある私も、この方の気持ちを全部は理解できないので、きっと男性であり同じような経験もしたことがない警察の人や検事さん、弁護士さんは、何がそこまで怖いのかよく分からなかったと思う。
ストーカーが治療できる可能性のある病気だという考えが、周りの人に理解してもらえなかったとも書いてあったけれど、そんなに理解しづらいことなのかな。アルコール依存症も痴漢も依存症的な病気だという考えが、割と一般的になってきたと思うのだけど。