病巣/江上剛

数年前に発覚した、東芝の不正会計をモチーフにした小説。

経営陣から無理強いされ、間違いだと分かっていることをやらされる社員達の様子を見ていると悲しくなる。その会社の一員であることを誇りに思っている人ほど、深く絶望する。

私も似たような思いをしたことがあり(ここまで大きな出来事ではないけど)、会社に失望したので辞めたけど、この話に登場する社員達は、そういうことがあってもまだ会社を見限らない。そのうちの一人は耐えられなくなり自殺してしまう。死んでも、奥さんや子供は困るし悲しむだけで、何もいいことがない。転職なんてどうにかなるし、たかが会社じゃないか。死ぬことなんて何もないと思うのに、思い詰めた人はそんな風に思えないんだよなあ。

 

病巣 巨大電機産業が消滅する日 (朝日文庫)