IoT革命/大前研一

IoTとはInternet of Thingsの略で、あらゆるものがインターネットにつながるようになった状態のこと。それにより、世の中でどのような変化が起こっているかをこの本で紹介している。

 

最初の章だけ大前さんが書いていて、残りの三章は別の方が書いている。

全部読んだけれど、元はと言えば大前さんが書いたIT関連の本ってどんな感じだろうと思って手に取ったので、大前さんの章に絞って感想、覚え書きなど書いてみる。

 

この本が出たのは2016年で今から3年前だけれど、私この業界に多少なりとも関わる者でありながら、この本に書かれていることは割と最近知ったことが多いや・・・。

コンサルティングの仕事をしている人というのは、その分野の専門家よりも詳しい知識を持って専門家の人達に提案をするわけだから、とんでもない仕事だなあ。高給取りなわけだ。

コカ・コーラの水増し監視システムとか、静岡県三島市で提案した(けど引っ張る人がいなくて実現しなかった)、空いている工作機械を地域で共有してコストダウンする話とか、面白そうな仕事をしていらっしゃる。と言うか、そういう案を考えられるところがすごい。

 

章の最後の質疑応答で、伝統的な大企業は変化にどう対応しているのか?という質問に対する大前さんの回答が、「質問が矛盾している。伝統的な大企業は、IoTで成功できない。」ええー、そんなピシャッと言い切っちゃうんですか。

大前さん曰く、もし三菱自動車Uberのアイデアを思いついても、関係者に説明するだけで五年、実現するには一世紀だと。ヒエーこれまたバッサリ。

大企業でIoTに取り組むのであれば、柔軟な頭を持った三人をピックアップし、半年に一回だけ報告するという条件で、あとは自由にさせると言った方法くらいしかないのである。

 なるほど、そうかもしれない。そして実際やれるかというと、仰る通り無理ですね。

いつかの夏/大崎善生

今から10年ほど前に起こった、名古屋闇サイト殺人事件について書いた本。事件当時のことは覚えていない。数か月前に、亡くなった女性の母親が、NHKの番組で事件について語っていたのを見て知った。

番組を見てぼろぼろ泣いてしまったので、この本を読むのを躊躇っていたのだけど、あまり泣かずに済んだ。音と映像の力が大きいということなのか、私に想像力がないということなのか。

 

真面目に生きていた人が、こんなしょうもない人達に殺されなければならなかったなんて理不尽だ。こういう人たちに関わらないようにしたいが、こちらがいくら気を付けても向こうから近付いてくるのだから、天災のようなもので防ぎようがない。

つい最近浜松で起こった事件も、インターネットを通じて集まった人たちが女性を拉致して殺してしまったというものだったはず。あれこそ、夜遅い時間に出歩いていたわけではないのにどうしたらいいのかと思う。

他人から金を奪おうなんてどうしようもない思考回路の人達だ。けど、そう考えてしまうのはお金がなくて犯罪に手を染めざるを得ない状況に陥っているということだろうから、そういう状況を作らないようにするのが一番の解決策なのかもしれない。うーん、ベーシックインカム

世界を変えた巨人たちIF/落合信彦

もし歴史上の有名人と話ができたら何を語るか、今の世の中や日本を見てどう思うかインタビューをしたら何と答えるか、を落合信彦さんが想像して書いた本。

落合信彦さんがどんな方なのかは殆ど知らない。息子さんの落合陽一さんを先に知って、そこからお父さん何やら有名な人なんだな、ということで知った。

 

私は歴史上の人物にあまり詳しくないし、親しくしていて亡くなった方はいないので、特に亡くなった方と話してみたいという願望はないけれど、こういう想像をするのは楽しいだろうなあ。

「自分の子供が殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい/森達也

この本はダイヤモンド社の雑誌に連載していた内容をまとめたもので、ダイヤモンド・オンラインにも転載されていたらしい。ダイヤモンド・オンラインは時々見るけど、森さんが書いたものが載っていたとは知らなかったな。

森さん曰く、記事によってはボロクソに言われることもあったようだけど、私はこの方の言っていることに全く嫌な感じはしない。むしろ好きである。

何でかというとうまく説明できないけど、波長が合うということなのかなあ。全部正しいと思うとか、同意見というわけではないのだけど。致命的な所では考えが食い違わない、ということかもしれない。

 

この本には色々書いてあるので、印象に残っている部分を箇条書きする。

  • クマバチは○○系だから積極的に刺さないはずと気付く小学五年生の息子さんとのやり取りが面白い。
  • ハンセン病という言葉は聞いたことがあっても、どんなものか全く知らなかった。色んな悲しいことがある。
  • 古事記の神話は信じないのに、原発安全神話は何故信じてしまったのか。イヤホンを耳に入れたまま人に質問をするのは私も非常識だと思うけど、本人はそうは思わず、でも質問の内容はしっかりしている学生さん。そして疑問に思った時に言わないからだという森さんの指摘。(この学生さんは、授業中は質問できる空気じゃなかったといってあとから質問に来た。)
  • やっぱり日本は事件の報道が多いんだな。朝ニュース見ようと思っても、国際ニュースなんてNHK以外殆どやってない。
  • 吹き替えが被せられることにより、元々話している人が発していた情報が聞き取れなくなってしまう。なるほど。
  • A3は読んでいないはずまたいずれ読もう。

「諜報的生活」の技術/佐藤優

最近、現状から脱出するにはどうしたらいいかと考えているので、引き際を間違うと泥沼になるという話が特に印象に残った。

気が付けば以前と同じ状況に陥っていて、そろそろ引き際について考えないといけないのかなあと思っている。でも抜け出す算段をつけられていないので、しばらくは現状で耐えるしかない。

 

引き際の話に続いて、始めるときに終わりについて決めておくのが良いと書いてある。

目的が達成された時、または一定の期間が経過した時にどうするかを決めておくのが良い。でないと方針を変えないといけないはずのタイミングを逃し、時間を無駄にしてしまうんだと。

現在の問題は、残念ながら私には、終わりまで見通せるようなものではなかった。それは仕方ない。でも今時間を無駄にしてしまっていると感じているので、そろそろ次の一手を考えないと。

アメリカン・スナイパー/クリス・カイル

SEALのスナイパーとして活躍し、米軍史上最高の狙撃成功回数を記録したと言われるクリス・カイルさんが、退役後に書いた自伝。

戦争が悲惨だったとか病んだとかいう話ではなく、最後まで一貫してSEAL最高!だった。

 

彼は人を殺したことに対して、全く罪悪感はないのだそうだ。仲間を傷つける悪い奴らだから死んで当然だと。そんな風に思えるのなら、人を殺すのもさぞや楽しかろう。

内容が嫌なものでも、周りが認めてくれて、本人がそれを正しいと信じていられるならば、楽しく仕事ができる。

正直羨ましい。私もそんな風に思って仕事ができたいいのに。

この方の優先順位は神、国、家族だそうで、その辺りの根本的な思想の違いが、考え方の違いに表れているのかもしれない。神や国が優先順位の上位というのは、私から見るとどういう心持ちなのかどうも分からない。

 

ちなみのこの本は映画化されてかなりヒットしたらしいのだけど、著者のカイルさんは映画が公開される前にPTSDを患った元軍人(しかもカイルさんが支援していた人物らしい)に射殺されてしまったのだそうな。

よりにもよってというかなんというか・・・。

ゼロからわかるキリスト教/佐藤優

マルクスが書いた「ヘーゲル法哲学批判序説」を読む講座の内容をまとめたものがこの本。「ヘーゲル法哲学批判序説」というのはマルクスが25歳の時に書いた論文で、「宗教は民衆のアヘンである」という一節はこの論文に書かれているんだそうな。

 

それで、キリスト教について分かったか、全体的に何が書いてあったかというと・・・うーん?という感じなので、気になったところだけ書いておく。

 

日本語に訳すときに意味がずれてしまった言葉

いくつか挙げられているけれど、特にずれてしまうのが「愛」らしい。

日本語の「愛」という言葉は強いて言うと、ギリシャ語で<欠けているものを埋め合わす>という意味合いの「エロス」にむしろ近い。神の愛なんて意味にもなる「アガペー」、あるいは友情などで使われる「フィリア」。こういう言葉のニュアンスは、日本語で「愛」としてしまうとほとんど伝わってこないまま独り歩きしてしまうんだ。

日本語の「愛」は「欠けているものを埋め合わす」?いまいちピンとこないな。じゃあ他の言語の愛はどんなものだろう。

友情は友情と言われれば分かるけど、神の愛はまた意味が違うんですと言われると、それがどんなものなのか全然分からない。

 

疑似命題

私は全く使ったことがなかった言葉で知らなかったのだけど、前提に深刻な誤認があって、最初から答えが出ない命題を疑似命題と言うんだと。

この説明の例として挙げられていたのは、数年前に日本人がイスラム国に人質にされ、72時間以内に2億ドルの身代金を要求されたけ件。

この要求は札束で渡すにしても銀行に送金するにしても実現可能性がない。真の目的は身代金ではなく、イスラム国の宣伝である。だから身代金を払う払わないという議論は疑似命題。

 

ハーバーマス

佐藤さんは、この人の考え方を知っておくと世界が違って見えるよと言っている。そんな人の本を私が読んでも面白くないんだろうなあとも思うけど、機会があったら見てみたいので名前は憶えておきたい。

どんなことを言っている人かというと、頭のいい人たちと、理屈なんて関係ない、気合で行くという人達の間で分裂が起っていて、放っておくといつか爆発するので、排除するのではなくて理解しないといけない、ということを言っている人らしい。

考え方のベースからちょっと違っている人達がいる、ということは、大人になってから少しだけ知った。子供の頃は同じような集団で群れているから、分からなかったんだよね。