ぼくは猟師になった/千松信也

 猟師と聞くと、世間から離れて一年中山の中で暮らすとか、マタギのような生活をイメージするけれど、著者の千松さんは普通の家に暮らし、普段は仕事もするなど現代的な生活をしつつ、猟の期間中だけ山に入って獲物を捕るそうだ。

ちなみに千松さんは銃ではなく罠専門で、山の中にいるシカやイノシシを獲るのだそうだ。罠を使う猟では他に、鴨やスズメなどの鳥を獲る人もいるらしい。

そうか、休日に釣りをするのと一緒か。趣味と考えると楽しそうだ。獲れた獲物はおいしいらしいし。

ぼくは猟師になった

ぼくは猟師になった

 

 

使える武術/長野峻也

何かあった時のために武術について知っておきたいと思っていたので、読んでみた。と言っても、そういう何かにあうことが一生のうちに一度あるかないかだろうけど。そう、何か武術を習ってみようかと思うこともあるけど、役立つ機会はないかもしれず、お金と時間をかけてやってみるかというとなかなかやれない。気軽に通えるところもそれほどないようだし。

だからせめて、危ない目にあった場合のことを想像しておくのは大事だと思って、ここでやばい奴が現れたらどうするかと想像してみたり、犯罪に関する話を本などで読んでみたりはする。そしてこの本にも書かれていたように、いざやるときは手加減なしでやるつもりではいる。まあ、いざという場面に直面したことがないので、本当に思う通りにできるかというと、その保証はないのだけど。

使える武術 (ちくま新書)

使える武術 (ちくま新書)

 

 

ヤノマミ/国分拓

 著者は数人のロケメンバーと共に、計150日間ヤノマミの集落で暮らした。本書はその記録。ヤノマミとは、アマゾンの奥地で殆ど文明に触れることなく暮らしている人々のこと。

 

常識や善悪は、自分の身の回りの人達がそう言っているからそうだと思い込んでいるだけなのだと思う。絶対的な善や悪なんてない。例えばヤノマミは生まれたばかりの子供を殺してしまうことがあるけれど、その行為は私たちが知っている、人の命は何よりも優先されるべきだという善悪の物差しでは測れない。医療の発達などで暮らしが楽になることが良いことなのかどうか分からなくなってくる。

 

西欧人がこの地にやってきてから500年の間に、ここにはなかった病原菌のせいで、人口の90%以上が失われたそうだ。

巻末の参考文献にジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」があったので、その辺りに詳しく書いてあるのかもしれない。

ヤノマミ (新潮文庫)

ヤノマミ (新潮文庫)

 

 

ユニクロ潜入一年/横田増生

 文芸春秋の記者である著者は、この本を書くより以前に「ユニクロ帝国の光と影」という本を書き、ユニクロから訴えられたが勝訴。その後ユニクロから、と言うより柳井社長から取材を断られ続けたが、柳井社長の、悪口を言っている人はうちの会社で働いてみてもらいたいという言葉を自分への招待状では?と考えて、ユニクロにアルバイトとして潜入した。

ユニクロ内で働きながら見たこと、そして海外のユニクロ下請け工場の悲惨な労働環境を暴いた人権NGOへの取材など、ユニクロの労働環境の問題を中心にまとめたのが本書。

 

文春の記者さんがどういう人なのかよく分からないが、多分優秀な人なんだろう。そんな人が下っ端のアルバイトとして働いて、本当は英語がペラペラなのに喋れないふりをしてみたりと、面白い。名前が割れてしまっているからと法的に改名してまで取材するとは、すごい執念だ。

酷い労働環境なのは、まあこんなもんだよねという気もするし、私たちが安くものを買える分どこかで誰かが搾取されていると思うと何だかむなしい気持ちになる。そこまで安さを追求しなくてもいいよ。

 

香港の人権NGO、SACOMのメンバーは何と20代の女性3人だそうな。世の中には色々な仕事をしている人がいる。

ユニクロ潜入一年

ユニクロ潜入一年

 

 

くらべる世界

 色々なものの国による違いを、写真とともに比較した本。

あやとりと折り紙は、日本の文化だと思っていたけどどちらも海外にもあるそうで驚いた。

フランスではじゃんけんの手の形が4種類あるそうで、形は違ってもじゃんけんは色々な国でやっているということが面白い。どこが始まりなのか、色々な場所でそれぞれ生まれたのか。

くらべる世界

くらべる世界

 

 

日本の問題/ピオ・デミリア

 日本で暮らすイタリア人ジャーナリストの著者が、東京で東日本大震災を経験し、その後福島に取材に行った際に見たものや感じたことをまとめたのが本書。

 

本の内容とは直接関係がないけれど、日本のデモは信号で立ち止まったりなど大人しすぎると指摘されていてへぇと思った。そういえば海外のデモは、周りに迷惑をかけることで主張を通そうとするようなことを聞く。そのくらいしないとデモの意味がないのかもしれないけど、とばっちりを受ける関係のない人達はたまらないと思うので、日本は今のままでいいよ・・・。

日本の問題

日本の問題

 

 

他者という病/中村うさぎ

中村さんは、体が硬直して痛みが走る謎の病気にかかり、ある日突然意識を失ってしまったそうだ。そのまま亡くなるか、生き延びたとしても意識が戻らない可能性が高いと言われていたけれど、奇跡的に回復し、元通りには動けないけれど介助があれば何とか暮らせるようにはなった。 

死にかける前に、薬の副作用で人格が変わってしまったので、薬の量を減らした後になってから、当時書いた文章を見てどう感じるかを書き加えたのが本書。

 

死ぬ時の感覚は、眠りに落ちる時と同じなのだと思う。中村さんが死にかけた時は、突然ブラックアウトして、あとは完全な闇(実際は闇ということすらも分からないのだろうけど)だったそうだ。人によっては何らかの映像を見るようだけど、眠るときに夢を見たり見なかったりするのと似ている。多分、生きているあいだには経験したことがないような特別なことは起こらないんだろう。

他者という病

他者という病