獄中記/佐藤優

いわゆる鈴木宗男事件絡みで拘置所に拘留された佐藤優さんが、拘置所の中から弁護士や友人に書いた手紙や、拘置所の中でつけていた日記などからの抜粋を本にしたもの。

この方の本は他に「国家の罠」を割と最近読んだのだけど、それと少し内容が被っていたので、もう少し時間を置いてから読めばよかったかなあ。

 

信念について

国家権力にターゲットにされた場合、逃げ切れないことは分かっているので、それならば裁判をどういう方向に持っていくか。

この方は、早く裁判を終わらせて楽になるより、正しさを通すことを選んだ。

自分が納得できる方を選びたいという気持ちは分かる。

人生の10年以上をかけて、色々な困難を乗り越えながらも正しいと信じてやってきたことに対して、悪いと思っていないのにやりましたごめんなさいなんて言いたくないよなあ。

でも何日も拘留されて、検察官に毎日怒鳴られたりしたら、私も折れてしまうのかな。

 

神学について

この方は神学部出身で、拘留中も関連する本を読んだりなどして勉強しているのだけど、私は宗教をあまり意識せずに生きてきたので、どういう学問なのかピンとこない。

そういう知識を持って世の中を見ると、何か違って見えるのかもしれない。

 

姿と声と

この本は日記の内容などが淡々と書かれている(ように見える)ので、この人は常に淡々として物静かな人なのかなという気がしていたけど、この本を読み終わった後、佐藤さんが出ているテレビやラジオの録音をいくつか見たり聞いたりしてみると、本から受ける印象と違っていて、ちょっと面白かった。

 

獄中記

獄中記

 

 

FBI心理分析官/ロバート・K・レスラー&トム・シャットマン

プロファイリングとは、過去の事件や実際に関わった事件の分析から得られた、経験の積み重ねによるものであるとのこと。
この本には、FBIの心理分析官となったロバート・K・レスラー氏が実際に関わった事件の様子や、異常殺人者たちとの面接により聞き出した犯行の手口、犯行前後の心理状態、彼ら生い立ちなどが書かれている。

 

異常殺人者達は、不幸な家庭で育っているということ

それでも、思春期頃に家庭の外で手を差し伸べてくれる人が現れれば救われるのだけど、それもなく、他人を思いやることを教えられないまままま大人になると、暴力的な妄想を現実にすることに歯止めをかけるものがないため、残酷な殺人を犯してしまうとのこと。

捕まって死刑になることが分かっていても止められるものではない。
病院に入っても刑務所に入っても、更生することはないというのが一部の専門家たちの見解らしい。
人はいくつになっても変われるという考え方もあるけれど、「どんな風にでも」というわけにはいかないのかもしれない。
後から正すのが無理なら、そのような不幸が起らないよう防ぐしかないのだろうけど・・・。

 

異常殺人を犯すのは、ほぼ20~30代の白人の男性であるらしい

20~30代というのは、思春期から積み重ねてきた妄想が爆発しだす頃だとか、知力、体力的に十分な年代だとかで、納得できる感じがする。
男性という点も、一般的に女性より男性の方が、力があり闘争心が強いものだと思うので、まあわかる。
けれど白人にほぼ限られるという話を聞いたのはこの本が初めてだ。
遺伝的な理由もあるということなのかなあ。

 

異常と言うけれど

例えば殺してから**したとか、この本にも書いてあるように、全く理解できないことではないんだよなあ。
異常殺人を犯した人達だって、人なのだから。
私達だって、似たような想像くらいはする。
違いは、それをどのくらい頻繁に、どのくらい現実的なこととして想像するか、実現したいと思うか、ということくらいではないかな。
実際にやるかやらないかの差は大きいのだろうけど、その差を決めるのは、歯止めをかけるものの有無だけかもしれない。

 

酷い犯罪を犯した人は死刑にすべきか、という話

異常殺人者達の分析が新たな殺人を防ぐのにとても有益だということと、だから彼らを殺さずに檻に閉じ込めておいた方が良いということは、理屈としては分かる。
その通りだろうなあとは思う。
でも自分の身近な人が被害にあったらそんなことは言っていられないだろうとも思う。
人間には感情があるのだから仕方がない。

 死刑なんて不毛だと思っても、いざという時には目には目を、の方がしっくりきてしまうもの。

 

FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記

FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記

 

 

 

よその子/トリイ・ヘイデン

トリイ・ヘイデンさんと、4人の色々な問題を抱えた子供たちのお話。

この頃のトリイさんは教師?

子供たちの問題は様々で、幼い頃に過酷な経験をした子、脳に障害がある子、原因が全く分からないけれど奇行を繰り返す子など。

 

トリイさんはいつもどうしたらいいか分からないと言っている。

こんなに大変な子供たちを預かっておいて、そんなに無策なのかと思うけど、実際作戦なんて立てようがないんだろうとも思う。

効果があるだろうと思えることをやってみて、それに対する結果が出ることは多くはない。

やったこととは関係なく、何だかわからないけど良くなったということの方が多いかもしれない。

そんな暖簾に腕押し、糠に釘みたいな毎日では心がくじけそうだけど、この方はそういう子供たちに魅せられて、この仕事を生きがいのように感じている。

 

日本語の副題に「見放された子どもたちの物語」と書かれているけど、この本の内容に合っていないと思う。

確かに見放された子もいるけれど、問題のおかげでさぞかし生活は大変だろうと思うのに(問題の内容によっては、どうやって一緒に暮らすのか私には想像がつかないような子もいる)、子を愛している親もいる。生みの親でなくても。

 

この本の冒頭に書かれていた、「生涯、窓のない壁に囲まれた世界の中に見失ってしまった」とは誰のことを指しているのだろう。

冒頭で呼ばれている名前と本文に登場する子供たちの名前は異なっているし、この本の終わりでは全員が一応いい感じでやっている様子までしか書かれていないので、全く分からない。

 

よその子―見放された子どもたちの物語

よその子―見放された子どもたちの物語

 

 

兵士を見よ/杉山隆男

航空自衛隊で働く人達の話。

主にF15という戦闘機に乗る人達と、事故や遭難が起った時にその救出にあたるメディックという仕事をする人達について書かれている。

 

戦闘機乗り

訓練中に事故で亡くなる方が、それなりの数いるとのこと。

けれど戦闘機に乗る人達は嫌々乗っているのではなく、乗る理由のほぼ全ては、戦闘機が好きだから、ということらしい。

大変だろうと想像はするけど、何となくかっこいいからこの職業を目指したと。そんなもんだよね。

 

戦闘機に乗るのは体にものすごく負荷がかかるので、頑丈なヘルメットとスーツに、酸素マスクまでつけなければならない。

パイロットは、他の職業に就いている人よりも顔にしわが多くできてしまうし、腰の調子を悪くする人も多いらしい。

9Gとはどのくらいか想像がつかないけれど、きっとジェットコースターのもっとすごいやつに乗った感じなんだろう。

多分乗せてもらったら、もう、早く終わってと思うんだろう。

一機何百万もするし、入念なメンテナンスが必要だし、乗りこなすのも大変だし。それでも、戦闘機を持たなければならないのか。ならなということなんでしょうね。

 

メディック

こちらは日本でも活躍する場があるので、戦闘機乗りよりはどんなものか想像がしやすい。

一仕事終える度にものすごく達成感はありそうだけど、その一仕事が毎度毎度大変すぎる。

それにしても、引き受けてくれる人がいるから私達は安心していられるけど、こんな職業の人の家族は、常に安心できないだろうなあ。

 

兵士を見よ

兵士を見よ

 

 

私の地球遍歴/石弘之

元新聞社のジャーナリストであり、その後環境に関わる様々な機関に勤めた著者が、世界各地で見てきた環境破壊の問題について書いた本。

 

私が覚えている限りでは、最初に環境問題について知って衝撃を受けたのは、小学校か中学校の図書館に置いてあった本で、酸性雨により何かの像が溶けていたり、森林がぼろぼろになっている写真を見た時だった。

あの頃は割と酸性雨が危ないとか何とか周りでも聞いたような気がするけど、そういえば最近は聞かなくなった気がする。

他にもオゾン層とか温暖化とか環境ホルモンとか、色々話題になっていた?ような気がするけれど最近はあまり聞かない。

けど、問題が解決したわけではなく、当時は問題が浸透し始めた頃だったから騒がれたとか、今は今で他に新たな問題があるというだけなんだろうなあ。

 

環境破壊の問題について、個人的には一応気にしていて、なるべく水や電気を無駄にしないように、ごみを出さないように気を付けてはいるけど、実際それでは大した効果はないんだろうと思う。

問題の規模が大きすぎるし、多くの環境破壊の根本的な原因はそういうことではないようなので。

世の中には問題が沢山あって、どれもこれも簡単には何ともならないんだよねえ。

 

私の地球遍歴―環境破壊の現場を求めて

私の地球遍歴―環境破壊の現場を求めて

 

 

選択の科学/シーナ・アイエンガー

この本には、その人が属している文化や、情報の提示のされ方などが選択に与える影響や、どのような条件で選択を行うと満足度が高いかなど、著者が研究してきた内容について書かれている。

毎回は難しいだろうけど、どういうものが判断を歪めることがあるか知っていれば、重要な選択をするときには色々な角度からよく考えて、自分が望まない考えに引っ張られていることに気付けるかもしれない。

それから、何でも自分で選べた方がいいんじゃないかと思っていたけど、そうでない場合もあるということについて。残酷な選択をしなければならない場合とか。

そういう時は人に任せたほうが、ダメージが少なく済んで良いかもしれない、ということも覚えておこう。

 

選択の科学

選択の科学

 

 

檻のなかの子/トリイ・ヘイデン

この本の著者であるトリイ・ヘイデンさんは、心理的・器質的に問題のある子供たちの手助けをしている人である。

(以前は教職に就いていたようだけど、この本の頃には、カウンセラーとかセラピストのような仕事をしている模様。職種が何なのかはよく分からない。)

この本には、トリイさんと、彼女が面倒を見ることになった、8年間誰とも口をきかなかった少年との出来事について書かれている。

 

このシリーズは他にもいくつか読んだことがあるのだけど、何故かいつものめり込んでしまう。

トリイさんは、こんな大変な仕事をしているのにそこら辺にいそうな感じの人で、私から見るとすごくどうでもいいことでうだうだ言っているようなこともある。

けれど、仕事に関する悩みや問題への向き合い方は共感するところがあるし、彼女が相手をする人達が、良くなったり悪くなったりするのを読んで嬉しくなったりがっかりしたりする。

そういうところがこのシリーズの魅力なんだろうと思う。

 

このシリーズに登場する人達は、世の中で色々な問題を抱えている人達のほんの一部だし、そのほんの一部の彼らも、救われるとは限らない。

この本の最後も一応はハッピーエンドだけれど、彼がその後の人生もうまくやって行けたかどうかは分からない。

言ってしまえば焼け石に水のように思ってしまう。

トリイさんもそれが分かっているし何度も絶望するけれど、それでも何度も立ち向かう。

きっと使命感とか正義感ではなく、本人も言っているけれどこの仕事に魅せられているということなんだろうと思う。

大変さとやりがいを天秤にかけてやりがいを選んでしまう気持ちも、分からなくはないよ。

 

檻のなかの子―憎悪にとらわれた少年の物語 (トリイ・ヘイデン文庫)

檻のなかの子―憎悪にとらわれた少年の物語 (トリイ・ヘイデン文庫)