仕事漂流/稲泉連
本書は、就職氷河期に就職し、その後数年で転職した8人の男女について書かれている。ちなみに、良い大学に行って良い所に就職した人が多い。
最近、今の仕事を不満に感じるような、いやどちらかと言うと、このままでは良くないんじゃないかという不安があって焦っているような・・・理由がよく分からないイラつきを感じる。その解決のきっかけにならないかと思って読んでみた。
私も新卒で入った会社を辞めた人で、彼らが転職した理由には共感したりしなかったり。
辞めた理由というのは色々あって、数年かけて積み重なってきたものと、辞める直前に爆発のきっかけになったものは少し違う。結局のところ、組織に入る前から楽しく働けるかどうか分からないし、状況によって周りも自分も変わるので、ずっと同じでいるのは難しいのかもしれない。時々見直しが入るのは仕方がないことなのかもね。
国語ゼミ/佐藤優
本の内容とは直接関係ないのだけど、経済原論の一説について説明されていたこと。
私達のような労働者は労働力を商品として売り、その対価として賃金を受け取っている。だから、
- 資本家にとって労働力はものを生産するための材料や機械と同で、使い倒すものである。
- 賃金は良い物を作って売り上げが上がったなどの成果に対する報酬ではなく、労働力という商品に対して支払われるものなので、会社の利益は労働者の賃金に直接結びつかない。
これ、よく覚えておこう。
勿論きっちりこのルールで世の中が動いているわけではないと思うけど。
それから、佐藤さんの他の本でも登場した山椒魚戦争、やっぱり面白そうなのでいずれ読みたい。
サイロ・エフェクト/ジリアン・テット
サイロとはトウモロコシなどを保存する大きな、多分円柱状のあれ。頭には何となくイメージが浮かぶけど、日本ではあまりなじみのない言葉だと思う。
この本では、組織内の各部門がサイロのように背の高い壁で区切られ、情報共有ができていない状態をサイロと呼ぶ。
大きなものを大きなままにしておいては制御できないので、分割するのは必要なことだけれど、徐々に各部門が、組織全体の利益ではなく各部門の利益を優先するようになり、部門間で情報を共有しなくなってしまう。
この本には、そうして衰退していった組織や、サイロを壊そうとした組織、サイロを作らないように努力している組織の例が挙げられている。
ちなみにソニーはサイロにより衰退した企業の例として挙げられている。
著者は元々文化人類学者で、文化人類学とは文化的側面から人々を分類する学問なのだそうな。
何故文化人類学の視点がサイロの研究に役立つのかというと、サイロは正式に定義されたルールなどから発生するのではなく、しきたりや慣習など文化によって発生するものだから。皆何となく「そういうもの」だと思っているうちに、自然とサイロが築かれてしまう。
オタクの息子に悩んでます/岡田斗司夫
岡田斗司夫さんが朝日新聞の悩み相談に回答する際、どのように回答を考えたかを書いたのが本書。
私は 岡田さんのことを「岡田斗司夫ゼミ」の動画を見て知ったのだけど、しばしば私には思いつかないような発想をされる方で、この本に書かれている悩みの回答も、スゲーと思うような回答やら笑ってしまう回答がちらほら。
最初に考えた回答の方向性が「面白い回答をしたい」とか「自分の独自性を出したい」とのことで、なるほど、そういうところを目指していらっしゃるからその通りになってるのか。
でも、こうして文章で読むのもいいけど、話しているのを聞く方がもっと良い。岡田さんは時々あはははは!って笑いながらすごく楽しそうに話すので。
それから私が質問者だったら、解決策よりも、この本に書いてあるような分析の方が聞きたい。悩みの本質が何なのかということを知ったほうが気が晴れる気がする。限られた文字数で回答をするから、解決策を優先せざるを得ないのだろうけど。
オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)
- 作者: 岡田斗司夫 FREEex
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2012/09/28
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死ねばいいのに/京極夏彦
突然見知らぬ人が訪ねてきて、亡くなった、しかも殺された人のことを尋ねられたらペラペラ話す気にはならないだろう。しかも訪ねてきた相手は失礼だ。本人は「ものを知らないから態度が悪かったら謝る」と言うのでそこは何とか汲もうとはするけど、快く話す気になんてなれない。挙句の果てに死ねばいいと言われるなんて、ないわ。
訪ねてこられた人達は、何かしら良くない点はあるにしても、それなりに頑張って生きている人達だ。できないんじゃなくてやらないだけだとか、それが簡単にできないから皆苦しむ。正論かもしれないけどコイツに説教されたくはない。
態度は悪いし仕事はすぐクビになる、端的に言ってどうしようもないケンヤが正しいことを言って、相手が言い負かされたかのように話が進むけれど、ケンヤはやっぱり変な奴だったのか。私には理解しづらい。そんな理由で、人を。
自分のことばかり話すのも、不幸だ不幸だと言いながら、死ねばと言われたら死にたくないと言うのも、それが普通の人だと確認していたのか。
絶望ノート/歌野晶午
皆自分勝手なんだよ。でもそれは仕方がないことでもあって、ただ責めることもできない。誰も悪くない。皆悪い。
無名/沢木耕太郎
この本は著者のお父さんが入院してから亡くなるまでの出来事について書かれている。
著者の沢木さんは主にノンフィクションの作品を書く作家さんらしいのだけど、私は沢木さんが作家であることを知らずに読み始めた。
機会があったらこの方の他の本も読んでみようかな。
沢木さんがお父さんと会話をするとき敬語で話していたので、何だろうと思った。二人のお姉さんがお父さんと話すときは敬語ではないのに。実は特別な関係だという話がそのうち明かされるのかと思ったが、そうでもなかった。そういう親子もあるらしい。
沢木さんは子供の頃全然勉強をしなかったけど国立大学に行ったと書いてあった。著者紹介の記述を見たら横浜国立大じゃないか。
勉強しなかったけど誰も文句を言わなかったようなことを言っているけど、横国に受かるなら誰も文句は言わないでしょうよ。
私は人が亡くなるまでの色々な大変なことをまだ経験していない。でもいずれは経験するはずなので、気にかかってはいる。具体的に何かしてはいないけど。
多分この本に書かれているのは、割と本人も周りの人も楽だったケースなのではと思ったのだけど、もしかして大変だという話の方がまれなケースで、大半の人はそこまで苦労しないのだろうか。