謝るなら、いつでもおいで/川名壮志
何年か前に、小学校6年生の女の子が同級生の女の子を殺した事件があった。被害者の女の子の父親は毎日新聞の記者で、その部下だった川名さんがこの本の著者である。
当事者間で、些細な喧嘩のようなものがあったという話は事件当時から挙がっていたけれど、親も弁護士も、大人たちはみんな理由がよく分からなかった。いくら何でもそんな理由で、友達としてそれまで付き合ってきた相手を殺すだろうか?
だけどそれが、実際に殺害の動機だったらしいということは、被害者の女の子のお兄さんの話を聞いてやっと腑に落ちた、ということだと思う。
当時中学生だったお兄さんの話は誰も聞かなかったので、彼はずっと一人で抱えていて、この本のために川名さんが取材した時には高校を卒業していた。
親たちは事件をずっと引きずっているけれど、お兄さんは殆ど乗り越えている。きっと最初から事情を理解していたからだろう。
お兄さん曰く、加害者の女の子は、集団にうまく入れないタイプの子で、ちょっとやりすぎてしまったのだろうということだった。
そういう人は、生きていくのが大変だろうなあ・・・。
加害者の女の子は当時11歳なので、少年法が適用されて犯罪者とは扱われない。どんな罪を犯そうとも、国が再教育すべき被害者として扱われるのだそうだ。
この本のタイトルはお兄さんの言葉。今はもう大人になり、社会に復帰しているはずの加害者の女の子は、謝りに行ったのだろうか。再教育は成功したのだろうか。