死刑/森達也

本書は、森達也さんが、確定死刑囚、弁護士、刑務官(死刑執行も職務に含まれる)、被害者の遺族、死刑制度廃止派の人、死刑制度存置派の人等に会い、日本の死刑制度の是非について述べた本である。

 

私は何年か前に読んだ13階段という本で刑務官の苦悩を知り、死刑に興味を持ち、この本のことを知って気になっていたのだけど、読まないまま今に至っていた。この本の感想を一言で言うととても面白かった。もちろん面白おかしいという意味ではない。森さんが色々な人の話を聞き、悩み考えたことが興味深かった。

 

この本を読んで知ったこ

世界的にみると、死刑制度がある国の方が少ない。

日本では・・・この本が書かれたのは2008年頃だけれど、少なくともその頃は国民の8割が死刑存置派だそうだ。調べていないけれど、多分今もそれほど変わっていないのではないかと思う。

この本でも言及されていたけれど、日本では死刑に関する情報が隠されていてあまり考える機会がないことが、死刑制度が変わらない原因の一つになっているようだ。

 

廃止か存置か

私はこの本を読んで廃止か存置かを決めたいわけではないのだけど。

森さんはこの本の取材を始める前に廃止派で、意見が変わっても構わないと思っていたけど結果的に廃止派だそうだ。森さんが、殺人を犯してしまった人でも、知り合ってしまったら救いたい、救いたいと書いているのを見て少し驚いた。この方がどういう方なのかよく知らないので意外と言ったら変なのだけど。この本の副題、まさか森さんのこの強い思いのことだったとは。

私は、死刑が全面的に良いとは言えないけれど、既に存在している死刑制度を廃止するほど強い理由は持ち合わせていない。つまり存置論者だ。でももし日本に死刑制度がなかったら、ほぼ間違いなく、死刑制度を作ろうとも言わない。死刑の是非について、どちらの意見もそれぞれそうだよねと思う。当事者だけでなくその周りの色々な人も含めた苦悩を考えると、どちらかに決められない。

 

死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う

死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う