東電OL症候群/佐野眞一

今から20年くらい前に起こった、東京電力に勤めていた女性が殺害された事件に関するルポタージュ。

私は、事件当時は子供だったこともあって、この事件のことは記憶にない。割と最近になって、そういう本があるなということから知った。佐野さんの、この本より以前の作品である「東電OL殺人事件」の方は読んでいない。

調べてみると、他にも色々な人がこの事件に関するルポタージュや小説を書いていることから、当時は相当話題になったようだ。どんな内容が報道されていたのか分からないけれど、被害者の女性が、エリートともいえる身分でありながら売春を繰り返していたということで注目されたんだろうか。それだけでもちょっと驚くべきことかもしれないけれど、この本によると、毎晩4人のノルマを自らに課し、それを何年も続けていたとか、売春をしていたことを会社の人達も家族も知っていたなどと書かれていて、なるほど闇が深いなと思った。

そしてこの本のタイトルに書かれている症候群とは、殺害された女性に共感する同年代の女性が多数存在したことを指している。「東電OL殺人事件」の読者から、佐野さんに、私も同じだ、被害者の女性の気持ちが分かるといった内容の手紙が多数届き、被害者の女性が客引きをしていた場所にある地蔵に、お参りに行く人もいたらしい。

私が共感するかというと全くそんなことはなく、へえー、そんな不思議なことがあったんだなあと思う。多数とは言っても、同年代の女性に絞ってもそのうちのほんの一部なんだろうか。それとも私が少数派なのか。もしくは時代の違いなのか。

 

この事件のもう一つの問題は、容疑者とされたネパール人の男性が、一旦無罪とり、十分な証拠がないにもかかわらずその後有罪とされ、何年も国に帰れなくなってしまったこと。日本は検察に起訴されたら90%以上の確率で有罪になるそうで、そのために割と無茶が押し通されるという話は聞くけれど・・・。

その後無罪にはなったようだけど、言葉もよく分からない土地でこんな扱いをされた男性は気の毒としか言いようがない。

 

東電OL症候群(シンドローム) (新潮文庫)