老父よ、帰れ/久坂部羊

主人公の好太郎は40代の会社員で、認知症のため施設に入っていた父親を、自宅に引き取って介護を始める。

将来自分が同じような立場になったら、ということを時々考えるけど、好太郎は介護のためにしばらく仕事を休んでも給料の何割かは貰えるという割と恵まれた境遇だし、外部のサポートも色々受けられるようなので、この話だけ読むと、意外と何とかなるものなのかなという印象を受ける。

私は、共倒れになるほど大変なのではとか、外部のサポートを受け続けるにはものすごいお金がかかるのではと考えてしまうのだけど。

自身の家庭だけでなく、近隣の住民のことも考えなければいけないとは、ちょっと思いつかなかった。確かに、火事なんかになったら謝って済まないからなあ。

 

好太郎は、父親に自分の名前を呼んでほしいと思っていて、何度か呼ばせようとするけれど、呼ばれることはない。私だったらどうだろう。以前は私を認識していた人が私を認識しなくなったら、そういうふうに思うものなんだろうか。

老父よ、帰れ

老父よ、帰れ

  • 作者:久坂部羊
  • 発売日: 2019/08/07
  • メディア: 単行本
 

 

世界のサンドイッチ図鑑/佐藤政人

ひたすらサンドイッチの写真とレシピが書かれている本。

大抵肉やら野菜やらチーズやらが挟まっていて、そりゃあどれだっておいしいよねと思う。

ちょっとびっくりなのがイギリスで、フライドポテトのサンドイッチ・・・これはまあポテトサラダのサンドイッチと同じようなものだと考えるとアリかもしれないけど、ポテトチップスのサンドイッチとか、パンを挟んだサンドイッチとか。こういうサンドイッチが、お店で売っていたりするんだろうか。

フルーツサンドが日本のサンドイッチとして紹介されていたのは驚いた。他の国にもありそうな気がするけど、日本が発祥なのかな。

 

無国籍の日本人/井戸まさえ

戸籍を持たずに暮らしている人がいる。戸籍は通常、子供が生まれた時に親が届け出をすることで登録されるものなのだけど、様々な理由でそれができない人がいる。その理由は、暴力や貧困が原因であったりする。そして戸籍を持たない子供は、学校に通うこともまともな仕事に就くこともできない。

著者の井戸さんは、制度の都合で、自身の子供が一時的に無戸籍になってしまった。その時の大変さを思い、戸籍がない人達が戸籍を取得できるよう支援している。

 

この本に登場した無戸籍の人達は、暴力や貧困のため驚くほど滅茶苦茶な人生を送っている。そして、戸籍を取得しようとしても簡単に取得できない。もちろん簡単に取得できては悪用されてしまうので、仕方がないのかもしれないけど、その人がその人であることを証明するために色々なことを尋ねられ疑われ、中にはそれが嫌になり、諦めてしまう人もいる。私には実感しづらいことなのだけど、戸籍がない人達は皆後ろめたいような気持ちで生きているそうなので、そうやって疑われるのは、普通の人よりもつらいことなのかもしれない。

この本に登場する人のうちの一人が、あと少しで戸籍を取得できそうだと思ったのに、学校に通っていないのにまともな文章が書けたりPCを扱えたりするのはおかしい、という理由で戸籍を取得できなかったと知った時、がっかりしてしまった。

無戸籍の日本人 (集英社文庫)

無戸籍の日本人 (集英社文庫)

 

 

雪ぐ人/佐々木健一

日本の刑事事件の有罪率は99.9%と言われていて、つまり起訴されたら無罪を勝ち取るのはほぼ無理ということだ。そんな状況で、無罪14件という実績を持つ今村核弁護士について書いたのが本書。

 

無実であることを証明するために、膨大な手間と時間を割くことになる。火事に関する事件で、燃え方について分からないことがあれば、実際に同じような状況を作って燃やしてみたりなど。そして得られるお金はほんの少し。普通の弁護士ならばそんなことはしない。もし自分が冤罪で捕まった時に、ここまでしてくれる弁護士さんには出会えないんだろうなあ。

 

今村さんは、今村さんのお母さんが言っている通り、不器用だから無理をしてしまう人だと思う。でもそうやって、無茶なことにも執念で向かっていく人が何人かに一人いてくれるから、世の中が少しずつ変わる。

雪ぐ人 えん罪弁護士 今村 核

雪ぐ人 えん罪弁護士 今村 核

 

嘘/北國浩二

認知症の人の行動は、普通の人から見ると不可解だけれど、それはできなくなったこととの整合性を取るための行動だったりなど、全部理由がある。そういう理由が分かるだけでも、きっととても救いになるだろうと思った。

嘘 (PHP文芸文庫)

嘘 (PHP文芸文庫)

 

太陽の子/灰谷健次郎

主人公は小学6年生のふうちゃんと呼ばれる女の子で、とても明るくて感じの良い子だ。ふうちゃんの両親は沖縄出身で、神戸で沖縄料理店を営んでいる。そのお店に集まってくる沖縄出身の人たちも良い人ばかりなのだけど、沖縄で戦争を経験していたり、沖縄出身ということで、本土で嫌な目にあった経験を持っている。

私の身の回りでは、沖縄出身の人に冷たくする人を見たことがないのだけど、少し昔だとそういうことがあったんだろうか。

基本的には、ふうちゃんが良い子で癒される系のお話だった。

太陽の子 (角川文庫)

太陽の子 (角川文庫)

 

恵美と一緒に/浦川裕子

娘さんを亡くした母親の手記。

娘さんはどうも付き合っていた男の人と一緒に大学内で自殺したようなのだけど、あまり詳しいことは書かれていない。著者の浦川さんは娘さんが亡くなった理由について疑問を持っていたようで、警察にもそのように伝えたけれど、状況から見て自殺とのこと。離れて暮らしていたこともあり、詳しい理由は分からないのだと思う。

 

突然大切な人が亡くなってしまったらつらいし、周りの人もつらいだろうなと思う。

浦川さんは、おかしな振る舞いをした会社の同僚にとても腹が立ったと書いていて、私もその内容を読む限りは何でそんなことを?と思った。だけど、大抵の人は娘を亡くした母親に今こそ嫌がらせをしてやろうなんて考えないと思うので、その人も良かれと思ってやったことが失敗だっただけなのかもしれない。

 

それにしても、会社の同僚に何百万円もの借金を申し込むってどういうことだろう。

少し古い話で、会社の同僚と家族ぐるみの付き合いもあったようなので、そういう時代だと会社の人とお金の貸し借りなんかもするのだろうか。

恵美と一緒に 

恵美と一緒に