受難/帚木蓬生

溺死した女子高生をiPs細胞と3Dプリンタで作る。

技術的に可能かどうかしか検討されず、倫理的にどうかということは誰も言わないのを不思議に思った。

しかも人を作るのなんて初の試みなのに、作った後のことも考えられておらず、とりあえず作れるかどうかしか考えられていないとは。そんな状態で人を作って、恐ろしくないんだろうか。

実際に問題は起こるのだけど、別の理由でその心配をする必要がなくなって、私はほっとした。

 

ES細胞は胚から作る、iPs細胞はどこでもいい、どこかの細胞を初期化して作るという説明は勉強になった。

 

法の雨/下村敦史

成年後見制度という言葉は聞いたことがあったけど、どんな制度かは知らなかった。この話では、認知症になった裁判官の奥さん自身が後見人になるよう申請をしたのだけど、後見人に指定されるのは大抵家族ではなく弁護士で、弁護士の許可がないと家族はお金を使えないらしい。しかも毎月何万もの手数料を取られるし、途中で辞めることもできないとか。自分の家族にお金を渡したくない人には良い制度かもしれないけど、そうでないのにうっかりこの制度を利用してしまうと面倒なことになりそう。

 

それから、検察に起訴された事件の有罪率は99.7%という話。そもそも有罪であることが明らかな場合しか起訴しないのであれば、有罪か無罪かを警察と検察が決めてしまっているのではと書かれていて、アレッ、確かにそうかなと思う。でも、何でもかんでも裁判をしていたらきりがないしなあ。

 

死の島/小池真理子

もうすぐ自分が死ぬということが分かったら、こんなふうに自分で死に方を決めて、きちんと準備をして、心置きなく死にたい。なるほど、こういうのを目指せばいいのか。

 

ボダ子/赤松利市

実体験をもとに書いたとのことなので、主人公は著者ということなのだろう。

大変だな、気の毒だなと思う一方で、この人自身も書いているけれど、この人は仕事人間で、家族のことを親身になって考えることはなかったんだなと思う。

けれど、そんなに手間暇をかけないと人間はまともに育たないのかというと、それもどうなのだろうという気もする。

ボダ子

ボダ子

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友罪/薬丸岳

自分が仲良くなりかけていた人が、昔凶悪な犯罪を犯したと分かったらどうするか。

私は、この話の会社の同僚のように、手のひらを返したような態度にはならないような気がする。これまでと全く同じように接することができるかどうかは分からないし、少し距離を置いたりはするかもしれないけど。

私はその犯罪の当事者ではないし、その人が今何かしら危うい様子がないのであれば、今付き合う分にはあまり問題がない気がするので。まあ、想像でしかないけど。

 

何があったかを話す前に、友達でいることを約束させるのはナシだと思う。そんなことは聞いてみなければ分からないし、聞いてみて気持ちが離れてしまうのであればどうしようもないのだから。

 

昔出演したAVをちらつかせて脅してくる男が出てくるけど、何で被害にあっている女性はこの男を警察に通報しないんだろう。DVDを会社の同僚に送りつけたり、家まで押しかけて来たり。暇なのか、そんなに楽しいのか。ストーカーでしょこの人。

 

タイタン/野崎まど

人間の仕事をAIが肩代わりするようになってから100年以上経った頃、世界に12基あるAIのうちの1基が不調になる。原因を探るため、AIを擬人化し、AI自身に不調の原因を尋ねることにした。そのカウンセラーとして選ばれたのが主人公。

 

パートナーのマッチングもAI任せ。これは精度が高ければいいかもしれない。でも終始ボードに乗って移動というのはどうなのだろう。筋肉が衰えてひょろひょろになるか肥満でぶよぶよになりそうだし、骨がスカスカになってしまわないのかな。他にも色々な能力が衰えそう。

 

何より、やらなければいけないことがなくなって、人々がどうやって生きているのかが気になる。

生きていくためにやらなければいけないことは、やりたくないと思うことも多いかもしれないけど、やれば誰かの役に立っているという承認欲求が満たされる。でもそういうものが一切なくなってしまって楽しく生きていけるのだろうか。

主人公は趣味でやっている心理学のようなものが世の中で高く評価されていて、こうして世界的な危機にお呼びがかかるくらいだから良いけど、やりたいことを自分で見つけられない人はいないんだろうか。