残穢/小野不由美

某漫画の作者さんが、書いている漫画に出てくる言葉の元はこの本だと言っていて、以前から気になっていた。怖い話は後から思い出すと嫌なので、手を出さないでいたのだけど、明るいうちに読んでしまえばいいだろうと思って、読んでみた。

 

最初の方の怪異はやっぱり怖くて読むのを止めようかと思ったけれど、後半の、怪異が起る理由を探っていく様子は面白い。その土地で過去に何があったか、調べられるものなんだなあ。ちょっとやってみたい。やらないけど。

 

この本は著者の小野さんの実体験である模様。(ありのままではないだろうけど。)その上で、音が聞こえたとか、何か見えたとか、その原因がこれだとか、それが事実かというと、その人がそう思うかどうかだと書いている。

私は怪異を経験したことがなく、一生関わりたくない。経験したことがなければ、存在するかどうかも考えずに済むだろう。この本の中に、ある土地に、人に話すだけでも障りがあるような強力な呪い(?)が存在すると書かれていて、詳細が気になるけど、調べないでおこう。

残穢(ざんえ) (新潮文庫)

残穢(ざんえ) (新潮文庫)

 

 

コメほど汚い世界はない/吾妻博勝

私たちが買っているお米の袋に書かれている、新米だとか産地だとか銘柄の表示は大抵間違っている。かもしれない。

実際にどうなのか知る術がないし、古米や他の種類の米が混ざっているくらいはまあいい。でも、何かに汚染された米が混じっているのは嫌だ。

 

以前、米農家の人は、本当においしいお米は自分たちで食べる分に回したり、知り合いに配ったりして、売りに出さないと聞いたことがある。一生懸命おいしいお米を作っても、消費者の手に渡る頃には色々混ぜられてまずい米になっているのでは、そりゃそうだろうな。

コメほど汚い世界はない

コメほど汚い世界はない

  • 作者:吾妻 博勝
  • 発売日: 2009/06/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

コラプティオ/真山仁

自分がこうありたいと願っている姿を維持するのって、難しいよなあと思う。無礼な奴にはなりたくないと思っていても、付き合いが長くなってきた相手の扱いが段々とぞんざいになってきたりとか。傲慢な奴にはなりたくないと思っていても、運よく順調な状態が続くと、自分は他人よりうまくやっていると思ってしまったりとか。

私のような庶民でもそうなのだから、国を動かすような力を持ってしまった人なんて、その辺のコントロールは難しそうだ。

独裁者なんて孤独で辛そうだ。周りに助けてくれる人がいないと、トップは辛い。

 

コラプティオ (文春文庫)

コラプティオ (文春文庫)

  • 作者:真山 仁
  • 発売日: 2014/01/04
  • メディア: 文庫
 

 

沈黙のひと/小池真理子

主人公である怜子の両親は、怜子が幼い頃に離婚し、父親とは殆ど合わないまま暮らしていた。けれど父親のパーキンソン病が進行し、介護施設に入ることになって、父親との交流が始まる。

やがて父親は亡くなってしまうのだけど、遺品から、様々な父親の過去を知ることになる。

 

うちの場合、両親は離婚していないし、私は両親と年に数回は会っているので、怜子のように、亡くなる直前や亡くなってから、父親や母親がどんな人だったか知ることはないと思うのだけど・・・。

いやでも、自分の両親がどんなことを考えているかよく知っているかというと、あまり知らないんだろうと思う。高校卒業と同時に実家を出て、それ以来年に数回しか会っていないのだから。

このままでいいのかなという気はする。だけど、そういうものなのかなという気もする。例え一緒に暮らしていたとしても、他人のことがそれほど分かるわけでもないだろうし。

 

沈黙のひと (文春文庫)

沈黙のひと (文春文庫)

 

 

礼賛/木嶋佳苗

著者の木嶋さんが何をした人かは知らずに読んだ。警察車両に乗っている場面から始まるので、何らかの犯罪を犯した人で、その犯罪の経緯がこれから語られるのだと思って読んだけれど、違った。でも、自分の人生には起りえない、他人の奇妙な人生は面白かった。読み終えてからインターネットで検索して、ああこの人かと思った。

 

こんなに多くの人と付き合うなんて、私だったら疲れてしまって無理だ。この辺りの生き方が根本的に違うんだろうなあ。まず、他に席が沢山空いているのに相席して良いかと言ってくる、見知らぬ男性と仲良くなるような(それは必ずしも悪いことではないと思う)、そういった隙は私にはない。場合によってはその場限りで話くらいはするけど、人間関係が続くことはまずない。

この人自身のことを差し置いても、母親は事故で片足切断、父親は事故死、知り合いがこの本に登場しただけでも2~3人が若いうちに病死というだけでも、どうしてこんなに色々な出来事がこの人の周りで起こるのかと不思議な感じがする。

 

礼讃 (角川書店単行本)

礼讃 (角川書店単行本)

 

 

帝の毒薬/永瀬隼介

主人公の羽生は、いわゆる731部隊に所属していた。下っ端のため、直接実験に関わることはないけれど、現地でも、戦争が終わって日本に戻ってきても、何だかんだで色々と巻き込まれてしまう。(主人公だから・・・。)

 

戦争を経験した人が当時のことをあまり語りたがらない、という話を聞くことがあるけれど、私もその立場だったらきっと、こんなつらいばかりの思い出は話したくないと思うだろう。

人を棒で殴り殺すか、さもなくば激戦地に行くか選べと言われたらどうするか。やっと日本に帰れると思ったら、ほんのちょっとした出来事で帰れなくなってしまう仲間の遠ざかる姿とか。安全な世の中でぬくぬくと生きている私にはきつすぎる。

帝の毒薬

帝の毒薬

  • 作者:永瀬隼介
  • 発売日: 2012/03/07
  • メディア: 単行本
 

 

オペレーションZ/真山仁

近い将来、日本のデフォルト(債務不履行)の可能性があるため、政府は歳出を半減させる案を実行しようとする。その案は、歳出の大半を占める社会保障関係費と地方交付税交付金をゼロにするというもの。これは弱者の切り捨てだということで、様々な反発が上がる。

 

正直、金融や政治の知識が足りないせいで、言葉の意味がよく分からないとか、ぴんと来ない部分がいくつかあった。どこまでが実態と合っているのか。どこまでが現実にあり得るのか。

少なくとも、近い将来国が破綻しそうだから、今のうちにちょっと苦しい案で皆頑張りましょうと言っても、このお話のように、多くの人はその案を呑まないんじゃないかなと思う。

それから、社会保障関係費と地方交付税交付金をゼロにすることについて、お金を出すのが大変だという面もあるけど、お金をばらまくだけでは救われない人がいるので、昔のようにみんなで助け合う社会にしましょうと言っているのだけど、助け合う社会にしましょうというようなことは、つい最近菅さんが言ってたなあと思った。でも、どういう意味なのか、説明はあったのだったっけ?

 

オペレーションZ (新潮文庫)

オペレーションZ (新潮文庫)

  • 作者:真山 仁
  • 発売日: 2020/02/28
  • メディア: 文庫